声明 100121


2010年1 月21 日| 声明・航空労組連絡会
  国民の交通権を守り、輸送の安全を守る要員の確保を(声明)




 日本航空は、1 月19 日「会社更生法」の適用を東京地裁に申請しました。

そして直後に企業再建支援機構が支援を決定し、日本航空の再建問題は「会社更生法」で進められるという新たな段階に入りました。

 日航の経営危機問題では、昨年8 月に有識者会議、その後9 月25 日には鳩山新政権によって再建タスクホースによる資産査定が始まりました。

9月30日には、緊急記者会見で前原国交大臣から「日航の自主再建は12分に可能だろうと思っている」との認識が明らかにされました。

 しかしタスクホースは1 か月後に解散し、その後は企業再生支援機構に委ねられました。同時に政府内に「日本航空再建対策本部」が設置され、政府の監督の下に日航再建策が進められてきました。


 この間、日本航空の企業年金問題がクローズアップされ、年金が経営危機の原因で、年金減額によって再建が実現できるかのような報道が連日のように繰り広げられました。こうした中で、11月23日の西松社長「年金の減額の可否が会社の存続に関わる」との発言や、翌24日の前原大臣「企業年金の減額の可否が支援機構の結論に影響する」との発言は、現役社員や年金受給者である退職者に大きな影響を与えてきました。しかし年金減額同意書集め締め切りの1 月12 日を前に政府は法的整理として「会社更生法」の適用を決定しました。日航再建問題では、この間の断片的な報道やリーク記事、推測記事が相次ぎ多くの関係者が翻弄されてきました。その結果、日航内の職場では政府や日航経営への信頼を損なう状況となってきています。


 企業再生支援機構がまとめた日本航空の事業再生計画について、現段階ではその詳細は全て明らかにされていませんが、報道によれば、2012 年までの3 年間にグループ社員の3 割にあたる15,700 人の削減や国内外で新たに26 路線の撤退など、労働者と利用者国民を犠牲にした計画が進められようとしています。

 また日本政策投資銀行の焦げ付き分として440 億円の国民負担が発生することも明らかとなりました。日本航空への国の支援について朝日新聞は、1 月7 日付の社説で「政府が守るべきは日航という会社組織ではなく、日航が担っている国民の足であり、貿易立国を支える航空輸送のパイプの役割だ」と論評しています。こうした認識は私たちと共通するものです。国民の交通権を守るのは国の責任であり、現在も国内線の半分を運航し、安全とサービスを担っているJAL の高い技術力とモラルを維持し、守っていく責任があります。税金の投入ということであれば、政府は経営危機の原因と責任を国民の前に明らかにする責任があります。


 現在、日本航空の職場は雇用の危機と労働条件の切り下げへの不安から将来に希望を持てない状況となっています。昨年12月に「日本航空安全アドバイザリーグループ」は新提言書の中で「社員の活気や意欲、自由な創造性、自由にもの言える職場、(中略)はすべて安全の基盤である」と断言し、労働者のモチベーションが安全性を左右する大きな要因であると指摘しています。再建策が何よりも企業の存立基盤である輸送の安全を第一義的に考えることを要求します。そのために必要な要員と労働条件を確保する必要があります。


 私たちは日本航空の経営危機の原因は、世界的な金融危機などの外的要因や日航の経営問題だけではなく、根本にはかつての政府の航空行政に大きな原因があると考えます。


 第一に、日航の過大な設備投資の問題です。これには日米間の貿易不均衡解消を目的とした米国からの航空機購入の圧力を指摘しないわけにはいきません。


 第二に、これまで国交省が進めてきた空港整備計画自体の問題があります。諸外国にはない燃料税や空港整備勘定5285 億円(2009 年度)の4 割を占める高い着陸料、また需要見込みのない中での相次ぐ空港建設、そして新規路線への就航圧力です。

このような航空行政を推し進める大本となっているのが、1990 年6 月に最終報告が出された日米構造協議の結論です。報告書によって政府は、米国の要求に応じ内需拡大を公約、430兆円(後に630 兆円)の公共投資基本計画を推進してきました。1980 年代の米国は「双子の赤字」に苦しみ、日本に対して「内需拡大を」による貿易黒字の縮小を強く求めてきました。これが日本への航空機購入圧力や実需を無視した空港建設につながりました。


 第三に航空の規制緩和問題があります。規制緩和によって1998 年には自社で整備能力を持たない新規航空会社の参入に道が開かれ、2000 年には航空法の改定で路線への参入・撤退が自由化され、新規航空会社が高収益路線を狙って運航するようになりました。その結果、日航や全日空は幹線の利益で地方路線を維持するという内部補助が不可能になり、不採算路線の維持が困難な状況が続いてきました。

また、こうした原因に加え、日本航空がナショナルフラッグキャリア−として利益の上げにくい国際線の展開や、日米間の不平等な航空協定下での競争を強いられてきたことも指摘しておく必要があります。


 このように日航の経営危機は、日航経営と自民党政権下で長期にわたって進められてきた航空行政が、経営基盤を弱めてきた大きな要因です。私たちは、これまでの政権が進めてきた誤った航空政策の根本にメスを入れ、日本の航空行政の自主性を守ることが現政権の責任と考えます。安全と公共性を守り、日航グループの現場で働く労働者の生活と権利が尊重され、希望を持てる再建策こそが日航再建につながるものと確信し、全力を挙げて取り組みます。

以上



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