phenix245号


再建と安全運航

利益・効率偏重で揺らぐ安全体制


JAL稲盛会長

「160人を残すことが経営上不可能かと言えばそうではない」


 「日本航空のベテラン機長や客室乗務員の解雇は、職業というものの奥深さを知り、仕事と深く結びついた人間の尊厳と経営効率の関係を問い直す事件である」(2月7日毎日新聞「風知草」)

 日本航空の整理解雇問題が国会で取り上げられています。2月2日の衆議院予算委員会で質問した志位和夫共産党委員長は、全日空と日航の機長の年齢構成比較や09年1月のニューヨークのハドソン川に不時着水させたベテラン機長の議会証言、日航アドバイザリーグループの新提言書の指摘、病欠を解雇基準にしている問題など、安全問題を中心に置いた質問をしました。
 「風知草」はこの質疑を記事にしたもの。記者は「志位の追及が視聴者をひきつけたのは、機長にかぎらず、どんな仕事であれ、プロとしての使命感や倫理観、人間を生き生きさせる職業意識を守り、効率偏重を抑えるという姿勢が鮮明だったからではないか」「経済財政危機と雇用不安の濁流渦巻く中で、経済再生と人間の幸福をどう調和させるか。歴史的な課題に一石を投じる質問だった」と締めくくっています。
 17日には、整備部門の体制や子会社切捨て、グランドハンドリング(地上支援業務)の現場が、日航の人減らしによって安全運航を脅かされている実態が追及され、大畠国交相は「立ち入り検査を行う」と答えました。大畠国交相は2月18日、伊東全日空社長、大西日航社長と国交省で面談し、大西社長には絶対安全の原点に立った再建を要望し、具体的な取り組みを報告するよう求め、立ち入り検査を行うことも伝えました。
 JAL・ANAの今年度第3四半期(4月―12月)決算が発表されました。ANAグループの営業収入は1兆391億円(前年同期比1153億円増)、営業利益777億円と大幅な増収を記録しました。JALグループは営業収益1兆888億円、営業利益1586億円と目標を大幅に上回りました。労働者の状態悪化の一方、航空会社の業績回復は一段と鮮明になっています。JALの稲盛会長は整理解雇問題で「160人を残すことが経営上不可能かと言えばそうではない」と記者クラブの講演で、記者の質問に答えました。物心両面の幸福を掲げる稲盛会長、日航再生と労働者の幸福をどう調和させるかが問われています。


■主な記事から■

・JAL不当解雇撤回

・2011春闘

・JMSエイジフリー裁判で不当判決

・契約制CA不当解雇撤回裁判

・清算・撤退・契約解除 JALグループ労働者

・健康を破壊する深夜長時間勤ー下

・安全会議だより(32)

・世界の航空事情


JAL不当解雇撤回

全国に広がる支援の輪

個人署名5万名を突破

 JALの不当解雇撤回を求める運動が日を追うごとに広がっています。「不当解雇撤回を求める」個人署名は5万名を超えました。各地で支援共闘会議の設立や宣伝行動が取り組まれています。
 12月中旬から始まった個人署名は2月20日現在で5万名を超えました。「整理解雇はけしからん」「原告の話をぜひ聞かせてほしい」との要請に応じ、市民団体や労働団体に訴えに出向いた回数は40回を超えました。日航本社前での抗議行動などは10回を超えました。2月22日には京都で、日本航空に稲盛会長をはじめ3人の役員を派遣している京セラに、京都総評労働争議支援京都総行動の一環として不当解雇撤回要請行動が取り組まれました。
 地域の支援共闘会議設立も進んでいます。1月31日には大阪で支援共闘会議が結成されました。福岡・札幌でも準備が進められています。
 「一産業の一会社の一部の労働者・労働組合の問題ではない…いま日本航空では、公的私的融資により再建会社には労働法が適用されない聖域であるという前例が作られようとしている…将来への禍根を残してはならない」(『労働法の話』)
 日航の不当解雇撤回運動は、解雇の自由を許すのか、労働者の雇用と生活を守るのかが問われている闘いです。


2011春闘

生活(くらし)と仕事

外航連

アライアンスに警戒警報

賃上げ・人員増・就業規則改悪ノー

 2月19日の朝日新聞のコラム『経済気象台』の見出しは「春闘はやめればよい」。なんちゅうことを!と気張って読んだら、労働者いじめの記事ではなく、日経連(日本経団連)への厳しい指摘でした。日本を代表する企業が集まった団体の主張が「金は払いたくない」という意志で貫かれた「経営労働政策委員会報告(2011年版)」を厳しく批判しています。儲かっていてもグローバル化の中での競争力を考えろといった企業経営者の説諭を含め、どこを読んでも勤労意欲をなえさせる一冊であると酷評しています。そういえば、経団連の副会長には航空界から選出された方もがんばっており、航空で一人勝ちといわれているA社でも大幅なリストラが進められています。JALは経営再建中で、社員より銀行の方にしか目が向いていません。
 こうした経営者の「賃下げ依存症」を抱えた中で2011春闘が進められます。
 航空では2月中旬から3月初旬にかけて賃金引上げや諸要求などの要求づくりが行われ団体交渉がスタートしました。
 寒さも一服、小春日和の成田で2月5日、外航連の会議が開かれ、外航労組の春闘をめぐる情勢が話し合われました。出席は9組合です。
 キャセイ航空労組は昨年秋闘で、2011春から賃上げを2%(約5000円)行うとの回答を引き出し、2010年1月に遡って支払われる、との報告がありました。アライアンスをめぐる動向では、航空会社間の業務提携で職場が片寄せされ、リストラにつながる動きが報告されました。一時金もこれまでの闘いで「外航は年間7ヶ月」水準を長い間築いてきましたが、経営側の抵抗も強まっています。これまでに増して連携強化が重要になっています。
 JALの破綻も少なからず外航労働者に影響を与えています。外航各社では「あのJALでさえそうなのだから」…我慢してほしいとの理屈で就業規則の改悪や勤務の改悪が提案されているところもあります。

 外航連では、2011春闘は@ベースアップ・定昇要求、A就業規則の一方的な改悪をさせない、B適切な人員増をはかること、などを要求の柱に取り組むことを確認しました。


JMSエイジフリー裁判で不当判決

JMS社は争議を解決せよ

 高齢者雇用を御旗に高齢者を採用していた会社で、「一方的に雇い止めされたのは契約に反する」として雇用の継続を求めていた裁判で、東京高裁は2月15日、訴えを棄却する判決を言いわたしました。訴えていたのはJALグループのJALメンテナンスサービス(JMS)で働いていた中野さん佛京さんの2人です。
 JMSは、元気であれば働き続けられるとして、定年退職者などの高齢者雇用を進めていました。ところが2008年10月、これまでの労使慣行を無視して中野康夫さんを、2009年4月には佛京英丸さんを雇い止めしました。二人は、スカイネットワーク(航空一般労組=SNW)に加入し、雇用継続を求め東京地裁に提訴しましたが、東京地裁は訴えを棄却し東京高裁に控訴していました。
 JMSは高齢者雇用の会社にもかかわらず、60歳から65歳までの社員に対しても希望退職を強要して人減らしを推し進めています。
 原告とSNWは、@不当判決に対して強く抗議する、Aしかし現状の情勢から最高裁への上告は行わない、BJMS社への争議解決は引き続き行っていく。あわせて、JALの一連の不当解雇問題についても全力で支援して取り組んでいくことを確認しました。


誇張・捏造だらけの雇い止め理由

組織的監視も明らかに

契約制CA不当解雇撤回裁判

証人尋問始まる

 日本航空の契約制客室乗務員が「一方的に雇い止めされたのは不当」として提訴した裁判は、2月25日の進行協議を経て証人が法廷に立つ局面を迎えます。
 原告は3年目の契約更新時、十分な説明がないまま一方的に雇い止めされました。雇い止めにいたる過程では、上位職から執拗かつ激しいパワハラの退職強要を受けました。過去、退職強要を受け泣く泣く退職していった人たちをそばで見てきたことから、今後はそのような人たちを出してはいけないとの思いで提訴に踏み切ったものです。
 裁判で日本航空は、雇い止め理由を51項目羅列してきましたが、本人も認めているものは3項目のみで、他のほとんどは捏造されたものやことさらに誇張したものです。
 例えば、「飲み物サービスのときポットを注ぐ位置が高く飛沫がPAXに飛ぶ恐れがあった」は、飛沫が飛んだ事実はありませんし飛沫がかかったというクレームもありません。「搭載中のギャレイには入るなと言っていたのに入った」は、ハンドバックを取ろうとして邪魔にならないように一瞬足を踏み入れただけのものです。
 「乗員部に入るとき一礼しなかった」「福岡のホテルで食事の予約を入れようとして間違った店に電話しようとした」などは、原告を自主退職に追い込むために、組織ぐるみで一挙手一投足を監視していたことを示しています。
 原告はこうしたレポートをもとに、帰着時1時間〜2時間にも及ぶ反省会のような面談を受けていました。「それは自分ではない」と否定したことさえ、反抗的とレポートされました。
 原告に対する雇い止め問題は、昨年末の整理解雇と根は同じです。日本航空が健全な再建を果たすためには、人権侵害や違法行為は一掃されなければなりません。自由にものが言える職場環境は安全運航の大前提です。航空安全を守るためにも、不当解雇撤回は重要な闘いです。


清算・撤退・契約解除 JALグループ労働者

JALは雇用責任果たせ・懸念される安全性低下

 1500名の目標を上回る希望退職募集があったにもかかわらず、大晦日に165名を整理解雇した日本航空。傘下のグループ企業では「清算」「撤退」の名で労働者切り捨てが進行しています。
 JALの事業縮小・人員削減の影響をグループ会社は直接受けています。JALのグランドハンドリング(地上支援業務)を担っているJGSグループでは2度の特別早期退職(昨年4・5月と12月)と希望退職(今年1月)の募集に約1500名が応募。加えて、関空の子会社2社を売却する一方、昨年10月以降委託会社3社と契約を解除しました。約240名の雇用が打ち切られました。
 2月末に空港事業から撤退する東急ファシリティサービス(TFS)では141名の1割は他部門へ配転、9割が退職。東急ファシリティサービス空港(TFA)労組の渡辺書記長は、「みんな空港が好きで働いてきたので撤退は残念です。会社は、契約料金が仕事の後で決まる空港特有の「後契約」の問題や、1年間に3度の契約見直しがあったと嘆いていました。退職者に12カ月分の割増退職金などを出させたのは、これまでの闘いの反映があります。撤退には納得できませんが、労働組合の存在感を示すことができたと思っています」と話しています。
 1月21日、日本航空のMD90型機とエアバスA300―600型機の重整備を専門に行う日東航空整備(NTM)は、会社清算と160名全員解雇を発表しました。清算理由は「A300型機の退役、MD―90型機も12年度中に退役計画があり、事業を継続するだけの受注が確保できない」。
 退職者には2カ月分の割増退職金と未払い一時金の支給、再就職先の紹介が示されていますが、不明確な経営責任、JAL系他社に比べて少ない割増退職金など、会社の一方的な対応に不満の声があがっています。
 有志5人がスカイネットワーク(SNW)に加入し、NTM経営とJALに雇用責任を求めています。NTM経営は、清算は自主的判断としていますが、JALや管財人らの強い意向があったことは容易に想像できます。日航ではNTMの清算によってMD90型機の重整備作業への影響が懸念されています。


健康を破壊する深夜長時間勤務

医学的にも仮眠は必要

深夜勤務と疲労と安全 

 羽田空港の国際線化で益々増える過酷な深夜勤務、更には、労働条件の悪化で一回の勤務時間もだんだん長くなっています。連続夜勤の職場も増加しています。深夜労働がもたらす健康への心配が広がっています

 右下の図は朝8時に目覚め、その後睡眠を取らなかった場合の覚醒度の推移を示したものです。覚醒度は23時頃から下がり始め、翌朝7時頃に最低値を示します。その後は中程度に上がっていきます。この例では、朝7時以降体は非常に疲れている状態にあっても、体内リズムによって覚醒度は徐々に上昇してしまい、深い質の良い睡眠が取りにくい時間帯に入ると考えられます。

 NASAの睡眠調査によると、朝7時に入眠した場合でも9時に入眠した場合でも、いずれも14時頃には目覚めのシグナルが働いてしまうため、それ以降はあまり眠れないとあります。このことから、徹夜勤務後の睡眠は極力早く入眠することが、睡眠時間の確保と睡眠の質の確保の両面から重要となります。これらの理由から疲労研究者の一般的な見解では、夜勤後の残業は疲労回復の観点から「厳禁」とされています。

 右下の図からは、夜間勤務の終了時刻が遅いほど入眠事刻は遅くなるが、体内リズムにより起床時刻はそれ程遅くならないため、睡眠時間が短くなってしまうことが分かります。例えば7時に勤務終了した場合、9時に入眠し13時には目覚めています。夜間勤務終了時刻が遅いほど睡眠の量は減少し、体内リズムの乱れも大きくなります。

 夜間勤務は単に睡眠不足となるだけでなく、その後の睡眠の量と質が共に低下し、さらに体内リズムを乱します。睡眠不足解消と体内リズム回復のための十分な休養策が取れない場合には慢性疲労を引き起こし、中長期的に見た場合、ガンや心血管系を始め様々な疾患の発症リスク増加にもつながります。リスクを極力減らすため、また作業の安全確保のためにも、科学的・医学的知見に基づいた疲労管理策を積極的に取り入れることが不可欠です。

 連続夜勤は、疲労回復に数日を要します。回復を早くするためには、夜勤は原則として一日、やむを得ない場合でも最大で2日以内に抑えることが必要です。
 また、月間の夜勤日数は極力少なくし、やむをえない場合でも最大で6日(または8日)以内に抑えなければなりません。
 夜勤の勤務時間が長い場合、「仮眠」の取得は疲労軽減のため、そして勤務後半のパフォーマンス向上に大変効果があります。一回の深い睡眠サイクルには、90〜120分かかるため、2時間〜3時間の仮眠が大変効果的です。

 【出典‥NASA疲労管理教育、AIRTRIC社疲労評価、2009年ストックホルム国際疲労シンポジウム、日本産業衛生学会意見書、交代制勤務基準研究会提言、ILO夜業に関する勧告など】


安全会議だより(32)

八尾空港の改善をめざします

 2月2日、八尾空港の調査に行ってきました。本部3名、大阪支部3名の計6名。大阪市営地下鉄谷町線東梅田駅から35分で南の終着駅へ。そこから車で約5分、八尾空港に到着。日頃上空から見ているものの、あらためて街中の空港であることを実感します。
 空港事務所の都合で1時間しか会議室がとれなかったものの、八尾空港を拠点として活動する5名の方々から、街中の飛行場ならではの問題や航空機の進歩に追いついていない旧態依然とした空港施設など、現在抱えている問題について討論しました。3月の八尾空港長交渉の要請活動に活かしていきたいと思います。
 帰り際には朝日航空さんのご好意でハンガー見学ができました。ジグソーパズルなみに収納された12機あまりの小型機、コックピットにはCRTが2台鎮座しており、35年前の小型機しか知らない者には驚愕の光景でした。地図の表示される飛行機で計器飛行証明取得のフライトを行うという話には驚かされました。
 会議後、懇親会がもたれ、席上、御巣鷹山慰霊登山も話題となり、参加に意欲を示された方々もいるとのこと。今後の交流の広がりが期待できる楽しい訪問でした。


世界の航空事情


日航の不当解雇問題は海外でも注目

世界運輸労連からも支援の表明

 世界運輸労連(※ITF)のコックロフト書記長が2月2日に来日し、航空連議長らと約2時間懇談しました。
 今回の来日は、コンテナ輸送に関する世界的な問題や、日航整理解雇問題などについての日本の関連加盟組合らとの意見交換が目的で、航空連側からは近村議長、森副議長、和波事務局次長、山下顧問、山田日航乗組副委員長が、ITF側からはコックロフト書記長、マヘンドラ・アジア地域副部長、飯嶋ITF東京事務所長などが出席しました。
 航空連側は、不当解雇問題と日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)と日航乗組(JFU)のILO(国際労働機関)への申し立てに関する詳細な説明、ならびにITFへの共同申し立てへの要請などを行い、コックロフト書記長からは、「不当解雇問題解決に向けて、可能な限りの支援を行う」との意思表明がありました。
 日航の不当解雇問題は海外でも注目されており、オーストラリア、スウェーデン、ノルウェー、パキスタン、トルコ、インドネシア、インド、クロアチア、アメリカ、カナダ、ブルガリア、カナダなどなどのITF加盟労組から内閣総理大臣や企業再生支援機構、日航経営への抗議メッセージや、原告らへ支援のメッセージが届けられています。
 航空連は、3月には組合アライアンスを締結しているIAM(米国、航空宇宙産業機械工組合=約70万人)、5月にはILO本部(ジュネーブ)やITF本部(ロンドン)への支援要請の訪問を計画しています。

 ※ITF=137ヵ国から605の交通運輸関係の労働組合が加盟し、陸・海・空の労働者468万人を組織。

許すな!乱暴な解雇・退職強要

声を上げよう4・14集会

 乱暴な解雇・退職強要を早期に解決させるために、新聞労連・JMIU・国交労連・航空連の共催で集会を開催します。多くの皆さんの参加をお願いします。

日時 4月14日(木)
   18時30分〜20時30分
場所 みらい座いけぶくろ
   (旧豊島公会堂)
   JR山手線池袋駅東口下車
          徒歩約5分

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