phoenix248号


247号 2011/06/01

■主な記事から■

JAL解雇撤回裁判、主張が出揃い証人調べへ
頑張るSNW。タイ航空橋本解雇裁判が勝利解決
対談〜なぜ解雇は強行されたか。社保庁闘争団とJAL解雇撤回争議団が対談
独自管制ルール見直しを〜大阪支部が局長交渉
ILO活用しよう〜航空連などが交流集会開催

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航空各社

震災・原発の影響 コスト低減さらに


職場に広がる疲労感

JAL 賃金改悪で増す生活不安


 東日本大震災と東京電力福島原発事故の影響による需要の落ち込みを受けて、航空各社は計画の見直しを進めています。柱のひとつは、さらなるコストの抑制と低減。企業業績とは裏腹に、将来展望を見いだせない現場に、行き詰まり感や疲労感が広がっています。


 全日空は4月28日、2010年度ANAグループ連結決算を発表しました。「世界的な景気後退の影響を受けた前期と比較して、航空運送事業で大幅な増収」「コスト構造改革を着実に実行し、グループ全体で営業費用の抑制に努め(た)」結果、「営業利益が678億円、経常利益は370億円、当期純利益233億円と大幅な増収増益となりました」。配当も「当初予想した以上の当期純利益を計上する見込みとなったことから、1株あたり2円」としています。

 「2011―12年度ANAグループ経営戦略」については、「震災による影響を見極め、必要に応じた修正を行うとともに戦略の深掘り、加速化も行(う)」として、重要戦略のひとつに「あくなき生産性向上とグループ運営体制の見直し」を掲げています。労働組合には、パイロットの高稼働を狙った「合理化」案が提案されました。主な内容は@夏季休暇の廃止A公休日の柔軟運用B日帰り国際線連続勤務C勤務の中断など。

 すでに全日空では、勤務時間を週35時間から40時間に延長し、相次ぐ勤務改悪による水準は40年前に逆戻りしたと言われています。ANAグループのエアーニッポン(ANK)のパイロットでもある航空連・片岡副議長は、「機材が中型機から小型機にシフトしており、小型機パイロットの高稼動が続いている。乗務時間が月70時間を超える人もいる」と話します。


 3月に更生計画を終了した日本航空。2010年度の営業利益は1800億円に達する見通しですが、破綻のしわ寄せは働く者に重くのしかかっています。

 日本航空では1月から新たな賃金制度に移行しました。家族・住宅などの諸手当は廃止され、整備職はベテランやシフト勤務者に冷たい賃金制度に見直されました。乗務員の賃金は出来高制になりました。これによって30%の賃金ダウンになりました。破綻前の10%賃金カットとあわせると4割ダウン。とりわけ住宅・教育ローンを抱えている人は、生活のやりくりに大変な思いをしています。

 グループ会社も同様です。4月から新賃金制度に移行したJGSでは昨年4月の賃金一律10%カットに加え、4月からは移行に伴うさらなる賃金ダウンと家族・住宅手当などの諸手当廃止。多い人では月7〜8万円の賃金ダウンとなっています。5月中旬、羽田空港のJGSを視察した日本航空の水留副社長は、皆さんの努力のおかげで2010年度は1800億円の営業利益をあげることができた、と挨拶したとのこと。JGSでは、「皆さんの努力のおかげ」が一時金にどう反映されるのかが最大の関心事となっています。

 JGS東京労組の夏季一時金要求アンケートでは、「この1年で1700名以上がJGSグループ全体で退職しました。この人員減による安全品質への影響をどう思いますか」との設問に、「すでに影響がでている」(70%)「今後は影響がでてくる」(21%)と、影響を懸念する声が9割となっています。


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JAL解雇裁判は証人調べへ

原告団 有言実行求め4度目の要請

 日本航空に不当解雇撤回を求め裁判を闘う原告団は5月18日、「誠意をもって話していきたい」と述べた稲盛日航会長に対話を求める4度目の要請書を提出しました。

 稲盛会長は1月19日の記者会見で、被解雇者と「誠意をもって話していきたい」と延べています。2月8日の日本記者クラブでは、「(整理解雇した)160人を残すことが経営上不可能かといえば、そうでない」と発言し、整理解雇に経営上の必要性がなかったことを認めています。原告団は稲盛会長の発言に、「私たちを無視するような態度は、整理解雇実施の最高責任者でありながら結果責任から逃れる態度であって、経営者としての見識が問われる」と強調します。

 不当解雇撤回裁判は5月23日にパイロット裁判が、同25日に客乗裁判が行われました。3回目となった裁判では立証計画と書面のやり取りがありました。

 日本航空は破綻の原因から目をそらさせるため準備書面で、「思い切った人件費の削減に踏み込めず、高コスト体質を温存させたことにある」と主張します。しかし破綻の原因と責任が人件費でないこと(営業費用に占める人件費比率は全日空より低位)、ましてや働く者に破綻の責任がないことは、日本航空自身が認めていたところです。

 破綻原因となった日米貿易摩擦解消の圧力による大型機の大量購入、燃料税や着陸料などの高い公租公課、ドル先物予約に象徴される放漫経営などの問題については、労働組合は再三にわたり指摘しましたが、日本航空も政府も無視し続けてきました。

 書面による双方の主張はほぼ出揃いました。今後は証人調べへと進められる予定です。

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がんばるSNW 解雇争議で成果


1年間で4件の勝利解決

 役割増す個人加盟労組


 航空労働者であれば一人でも入れる労働組合、スカイネットワーク(SNW)が解雇争議で成果をあげています。タイ航空を不当解雇され、解雇撤回を求め裁判を闘っていた橋本さんは5月9日、大阪地裁で勝利和解しました(次号報告)。4月のロシア航空の青木さんに続く勝利解決です。SNWではこの1年間で4件の解雇争議を勝利解決しました。

← タイ航空の橋本さん

 中央労働委員会によると、2010年に全国の労働委員会が民間の労使紛争をあっせんした件数のうち、個人加盟の労働組合が関わった件数が約7割に達し、過去最高になりました。内容別では解雇24・9%、賃金問題22・2%。労働組合が関わった事件が393件で約7割。解雇などをされた後に労働組合に入り争う「駆け込み訴え」が207件と目立っています。

 SNWは2003年4月から活動を開始し労働相談などに対応してきました。「職場での労働条件、雇用契約関係、就業規則、労働安全・健康に関することなど疑問に思ったら気楽に連絡・相談ください」と松尾SNW委員長。現在は、JAL再建のなか事業閉鎖された日東航空整備(NTM)の解雇問題に取り組んでいます。

 NTMは今年1月21日、3月31日をもって事業終了と会社解散、特別清算を発表しました。労働者には退職を求め、応じなかった者は3月31日に解雇を強行しました。しかし4月以降も会社は存続しており、いまもって特別清算の手続きはとられていません。NTMの労働者がSNWに加入しNTM分会を結成し雇用確保を求め闘っています。


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不当な解雇は絶対許さない

社保庁不当解雇撤回全厚生闘争団 JAL不当解雇撤回原告団

国策の失敗を労働者に押し付けるな
年金機構 525人解雇して1000人採用

 2011年4月14日に開催された「許すな!乱暴な解雇・退職強要、4・14集会」は、新聞労連・JMIU・国公労連・航空連が所属する上部団体の枠をこえて開催されました。集会は主旨に賛同した多くの団体や争議団、労働者ら1000名以上の参加者があり大成功でした。今日は、そのとき一緒に主催した団体で525名が解雇されて現在解雇撤回で頑張っている国交労連・社会保険庁不当解雇撤回・全厚生闘争団事務局次長の國枝孝幸さんにお越しいただき、日航の不当解雇撤回裁判の原告団、清田均さん(パイロット原告団事務局長)、飯田幸子さん(客室乗務員原告団)の3人で今後の不当解雇撤回闘争の展望について語っていただきました。

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 編集部 最初に、旧社会保険庁から分限免職(解雇)されて、現在闘争団の事務局次長の國枝さんから「4・14集会」の感想と、民間ではちょっとわかりづらい525名の分限免職について伺いたいと思います。

 國枝 こんにちは、私たちは、2009年末、社会保険庁の解体・民営化により、雇用を守るべき政府・厚生労働省が職員525名を分限免職(解雇)したため、現在解雇撤回闘争を行っています。この間、公務員の国公労連を中心に頑張ってきていますが4・14集会は、ナショナルセンターの枠を超えて「不当な首切りは許さない」と2階席までいっぱいになった参加者でびっくりしました。社会保険庁の首切りも日航の首切りも根はひとつだと思います。

 清田 4月14日は朝から日本IBM社や厚労省、新聞社のブルームバーグ社(※)などへの要請を行い、集会に参加しました。日本IBMもブルームバーグも不当解雇にいたる手段を聞くとまさに私の解雇と一緒でベテラン社員を強制的に退職強要するため上司10人と面談させるなど共感できました。

 飯田 4・14集会はナショナルセンターのワクをこえた人たちが集まってすごく新鮮でした。4団体以外でも多くの不当解雇や首切り強要と闘っている争議団や働く人たちが大勢参加されて元気をもらいました。今、解雇撤回に向けてみんなで署名のお願いや他団体への訴え(オルグ活動)などいろんなことを頑張っています。ただ個人的には宣伝カーの上は苦手です。


ベテラン退職 現場は悲鳴

 編集部 社会保険庁の解雇事件をもう少し詳しく教えてください。

 國枝 一連の年金問題でのバッシングで「社会保険庁はなくしてしまえ」という世論を背景に政府・厚生労働省は年金業務を日本年金機構(民間)に移行しました。これは以前より小泉政権時からの「年金減らせ」「公務員減らせ」の大号令の流れをくんだ動きでもあります。その結果、年金機構は、新たに1000人採用しながら、社会保険庁で働いていた年金記録に詳しいベテラン公務員は525名分限免職(整理解雇)される結果となってしまいました。

 清田飯田 それはひどい話ですね。

 國枝 今回の社会保険庁の解雇事件では、前回の郵政民営化のときと違って、「雇用を引き継がない」ということが大きな問題です。社会保険庁では、あふれる年金記録問題で、年金機構に継承される前に4000名もの人たちが泣く泣く職場を去っています。16000名いた職員が12000名になりました。そして年金機構に移管したら民間から1000名採用しながらベテラン525名を解雇する。これで本当にこれから年金記録問題がきちんとしていくか大きな疑問です。年金機構という民間会社になったので職員から非正規の准職員が増えているとも聞きます。

 争議の現状ですが、私たちの場合、分限免職(整理解雇)された場合、公務員は法律によりすぐ裁判というわけにはいきません。まず、人事院に不服審査申し立てを行います。その人事院の判定に不服の場合に、はじめて裁判となります。裁判官にあたる人事官3人のメンバーは@厚労省事務次官AJR副社長B大学教授の経歴の人たちです。現在、解雇された元職員の全厚生労働組合員39名と、その他30数名が人事院に対して不服審査請求中です。39人は京都15人、東京4人、愛知4人他、北海道、秋田、愛媛…など全国に闘争団員がいますので、一同に会することもなかなか大変です。私は愛知県出身ですが東京で組合専従として頑張っています。今年8月くらいまでに全厚生労働組合員の人事院審理が終わり判定を待つことになります。

 清田 JALの裁判は乗員(パイロット)・客乗が月1回ずつのペースで、東京地裁で行われています。5月23日、25日にそれぞれ3回目が行われます。「迅速な審理」は会社側も現在ノーとは言っていません。私たちは、JALの違法不当な解雇が社会的にも糾弾されて私たちに大きな支援が広がっていることを武器に早期に解決をめざしています。支援共闘会議も大阪・福岡で作られて新たに千葉や広島などでも作られようとしています。解雇撤回の署名も短期間で13万筆を超えました。パイロットの原告には新たに2名が加わったので、パイロット・客乗合わせ148名の原告団となりました。

 國枝 私たちは解雇されて1年がたちました。公務員に雇用保険はありません。これは、公務員は身分保障があり解雇の想定がないため雇用保険料は払っていません。したがって、いきなり生活困難となります。今回の争議団39人の年齢は多くが30歳代から40歳代です。中には育児休業中に解雇された方や、年金記録問題のために連日の激務で心の病気にかかった方まで今回解雇されています。

 清田 私達の原告の中でも、雇用保険の仮給付が早い人では半年で切れるので、やはり解雇されて生活面での心配をできるだけ取り除くための仕組みが必要で、「支える会」の立ち上げ準備を進めています。外部の団体に支援要請に伺うと国労の闘争経験者の方とか多くの方から親身になって原告団の闘い方などにアドバイスをいただいています。私自信も驚いているのですが、解雇されている原告団が驚くほど元気があることです。「職場に帰るんだ!」という気概がすごく強いんです。

 飯田 解雇された原告が「がんばるんだ!」という覚悟が必要です。当該の人たちが確信を持って元気に過ごすことが重要だし、今もみんな頑張っています。これまで組合活動の経験がない原告の人ともいっしょに地方や他団体へ訴えに行きますが「生き生きと元気に支援を訴えられる」ことに本当にびっくりします。


年金・安全・サービス守るため

 編集部 東日本大震災後、現地の公務員のみなさんの頑張りに感動します。この間様々な形で公務員バッシングが行なわれてきましたが、国民の見方にも変化が出ているのではないでしょうか。

 國枝 大震災の件では私もそう思います。年金記録問題では私たち社保庁労働者は本当に多くの批判を浴びてきました。その後の年金業務では深夜残業や休日出勤で大変な中、記録回復に努めました。機構への移行でベテランが多く退職し、さらにこの解雇で現場は大変だという悲鳴を聞きます。私の後輩からは、大変だから職場に戻らないほうがいいですよ、とも言われたことがあります。私はそれでも解雇を撤回させて職場に戻りたいと真剣に思っています。職場に戻って安心した年金制度を実現する職場を作っていくんだという気概を持って仕事をしたいと思います。

 清田 私たちの職場は航空機の安全運航に本当に直結しています。職場が暗く言いたいことが言えない職場では、本当に航空事故が心配です。そのためにもなんとしても早期に職場に戻りたいと思います。私も年金問題では、社保庁で働いていた人には責任はないと思います。国や年金政策の失敗の犠牲を労働者に押し付けてきているのだと思います。

 飯田 社保庁から移管された年金機構で非正規の社員が増加していると伺い、私たちの職場と同じだと感じました。私たちの職場は、安全とサービスをチームワークで守ることですし、社保庁闘争団でも年金の安全とサービスを守ることです。ともに解雇された私たちが、国民の皆さんに広く正直に訴えて行けば理解されると信じています。4・14集会のような多くの人に支援が広がるような取り組みを広げて一緒に頑張りましょう。

國枝 私たちも皆さんと一緒にいろいろな取り組みをしたいと思います。「全厚生闘争団を支える会」のHPも立ち上げましたし、航空連のHPもよく拝見しています。お互いにリンクをはり合って解雇撤回に向けて一緒に頑張りましょう。

 編集部 今日はありがとうございました。不当解雇を撤回させ早期に職場復帰するために、共に力をあわせがんばりましょう。


(※)世界127カ国に事務所を構え金融情報を発信している通信社。


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独自管制ルール見直しを

大阪支部が局長交渉

 4月21日午後、航空安全会議大阪支部は大阪航空局長要請を行いました。局からは管制保安部長以下12名。安全会議の参加者は福岡・鹿児島・沖縄支部5名を含む16名。要請は3時間、32項目に及びました。同日午前には大阪管区気象台長交渉を実施しました。

 交渉の焦点は、2009年9月に伊丹空港で滑走路誤進入防止として導入された独自の管制ルール「ストップライン」運用廃止要求です。回答は、「大阪空港ではこの用語の使用開始以降は誤進入が発生していない。RWSLやMLATの状況を見ながら考えていきたい」でした。

 大阪支部は、伊丹空港特有の制度が不慣れなパイロットに混乱をきたしていること、通信量の増大と離陸前の集中力がストップラインに注がれスレッドとなっている、と訴えます。

 昨年の大阪空港長交渉では「問題は理解している」とし、局長交渉では「代替策を考えたい」との回答がありました。

 東日本大震災が起こって間もない頃、大阪空港に飛来した自衛隊機が指示を理解できなかったため、管制官が機転をきかせて「Hold short of RWY32」と言い換えました。周知の限界を示され、担当者も返す言葉を失っていました。地震の影響で6月に延期されている大阪空港長交渉でも、ストップライン運用の問題点を訴えていきます。

 「PBBタイヤ巻き込み防止用防護柵設置要請」は中部・羽田に加え、関空でも設置されつつあるとの前進回答でした。大阪支部は、新設や更新時機に限らず積極的に設置を進めていくよう求めました。

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安全会議だより(35)

解雇撤回ILO活用しよう

航空連など交流集会を開催

 4団体共催(航空連・東京地評・東京社会医学研究センター・ILO条約を日本に批准させる会)による「ILO条約を学ぶとともに闘う交流集会」が5月14日フェニックスビルで開催されました。参加は79名。

 村上剛志東京社会医学研究センター理事の開会挨拶で始まった交流集会は、「今日の日本の労働者の現状とILO条約の活用」(牛久保弁護士)「日本航空整理解雇事件ILOへの申し立てについて」(堀弁護士・南部法律事務所)「郵産労のILO訪問活動とその成果」(廣岡郵政産業労組委員長)の基調講演を受け討論し、闘いの経験を交流しました。

 講演では、ILO条約加盟国は183カ国に上りILO条約を批准すれば政府も使用者もその実施が義務づけられること、日本は188条約中48条約しか批准していないこと、是正勧告を生かし闘うこと、国際連帯で世界の労働基準を引き上げることが展望をさらに広げるうえで重要、などが語られました。

 講演後の討論では全日本教職員組合と国鉄労働組合から、ILOを活用した闘いの経験と成果について発言がありました。JALの不当解雇事件は、日本が批准している第87号条約「結社の自由及び団結権の保護に関する条約」と第98号条約「団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約」、第122号条約「雇用政策に関する条約」、第111号条約「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」の4条約に違反していることを確認しました。ILOは批准していない条約であっても、「雇用と職業の面で、どのような差別待遇も行われてはならないこと」が規定されています。

 JAL不当解雇裁判原告団と航空連代表らによるILO訪問団は、5月22日〜29日の日程でスイスのILO本部やロンドンのITF(国際運輸労連)本部、IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)を訪問します。

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