phoenix250号


■主な記事から■

▼JALグループ6乗組が連合体を結成

▼疲労蓄積―後を絶たない事故トラブル、効率化で奪われるゆとりと安全

▼イラン航空に一時金未払いで労基署が勧告

▼労働法の話―信頼され強い労働組合に(最終回)      

▼ITFアライアンス会議参加 日航不当解雇撤回を決議   

▼今だから安全の話をしよう。 各地で安全集会開催     

▼原発事故を考える                   


JALグループ6乗組が連合体を結成

要求の前進には企業の枠超えた連合体が必要

 日本航空グループ6乗員組合(日本航空乗員組合=JFU、北海道エアシステム乗員組合=HAC、ジャルエクスプレス乗員組合=JEX、ジェイエア乗員組合=J―AIR、日本エアコミューター乗員組合=JAC、琉球エアコミューター乗員組合=RAC)は7月3日、日本航空グループ乗員組合(JGPA)を設立し、同時に6乗員組合の加盟を決議しました。これにより組合員約2000名の連合体「JGPA」が誕生しました。

 6乗組は、今年4月に日本航空グループ乗員組合「JGPA」設立に向けた組合間協定を締結し、設立に向けた手続きを進めてきました。日本トランスオーシャン乗員組合(JTOPS)は設立総会時点ではオブザーブ参加。
 これまでJALグループの各乗員組合は、2002年のJAL・JAS統合以降、定期的に会議を開催し、グループ乗員組合の連携を模索しながら取り組んできました。昨年のJAL経営破たん以降は、それぞれの組合が雇用問題や訓練停止問題、賃金制度改悪、基地移転問題など大きな問題に直面するなか、雇用と労働条件の確保を目指す「7乗組統一活動方針」を決議し、さらに連携を強化して取り組みを続けました。
 世界の航空会社がアライアンスを軸にした経営戦略へと移行し、今年4月にはJALとアメリカン航空、ANAとユナイテッド航空・コンチネンタル航空との間で太平洋路線において共同事業が開始されました。




魅力ある職場実現

 こうした情勢の中で、労働組合も企業内組合の枠を超え、従来の連携をさらに発展させた体制を構築して取り組むことが要求の前進には必要であるとの情勢認識から、連合体の設立という機運が高まり、JGPA結成へとつながりました。

 JGPA設立宣言は設立主旨をこう述べています。

 「乗員としての未来に亘る働き方への取組みは、会社や組合の既存の枠組みを超える」
 「今なお、乗員は、厳しい局面の最中にある。そして、乗員にとって魅力ある職場実現を使命とする組合は、その取組みをどう進化させられるかを試されている。日本航空グループ6乗員組合は、これまでの企業内組合という日本特有の既成概念にも捉われることなく、世界の乗員組合に学び、この試練に対して果敢に挑戦するため、日本航空グループ乗員組合という旗の下に結集した。
 我々の前には大いなる責務がある。乗員としての職場を守り、かつその環境の維持・向上を図るため、訓練中断によって大きな痛みを受けている訓練生・副操縦士の将来への展望のため、そして、安全運航を堅持するため、日本航空グループ乗員組合は、グループ全乗員の一致結束のもと、取組み続けることをここに決意する」。

 8月末の総会で役員体制を確認し、第1期の活動を開始する予定です。
設立総会で代表して挨拶した宇賀地JFU委員長は「JGPAは次の時代を見据えた取り組みです。乗員の養成体系などについても従来の垣根を越え活発に議論がなされています。激変する航空業界の中でしっかりした対抗軸として新しい乗員の組合の姿を、揺るぎない団結をもって作りあげていきます」と力強く決意を述べました。

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▼疲労蓄積―後を絶たない事故トラブル、効率化で奪われるゆとりと安全

 010年度1840億円の営業利益を上げ2011年度も計画の757億円の営業利益は確保できるとする日本航空。震災・原発事故の影響により2011年度の営業利益目標の公表をさけた全日空ですが、相次ぎLCC(ローコストキャリア=低運賃運航会社)を立ち上げるなど華々しい花火をぶち上げています。しかし安全運航を支える職場には疲労感とほころびが広がっています。

 6月22日日本航空の安全推進本部は、航空機に搭載する貨物や手荷物等で重量間違いが相次いでいるとして、注意喚起の文書を発信しました。
 文書は「5月以降わずか1ヵ月半の間に、7件のLCインシデントが発生…急増・悪化している非常に危機的な状況」とし「ほとんどのLCインシデントは基本手順不履行に起因し…確認会話の不足など『チーム力』による未然防止も十分機能していない」と。

 全日空では7月8日、航行中のボーイング767型機が離陸後、左エンジンに振動が発生したため、エンジンを停止し、羽田空港に緊急着陸しました。点検したところ、エンジン内部のブレード(羽根)が欠けたり折れているのが確認されました。

 JALのグランドハンドリング(地上支援業務)を行なうJGSでは、7月4日〜9日までに6件の災害事故が起きています。
 航空各社は、競争・生き残りとして相次ぎコスト削減策を打ち出してきました。これによって労働時間は週40時間の最低水準に引き下げられ、年間休日数は10日以上も削減されました。整備の現場では連続長時間勤務や連続夜勤が導入され、旅客カウンターの職場では01時30分始業の勤務も設定されました。

 整備連(航空連の専門部)は、「取り外すべきピンを挿したまま出発させた」「電気配線を間違って接続」「閉めるべきドアを閉め忘れた」などの事象は、「航空機整備には二重三重のバックアップシステムがあるものの、ミスの重なりによって不安全要素を拡大している」と分析しています。日航ユニオンの11春闘アンケート調査では、極端な人員減と作業量の増加、スキル(技量)低下、部品不足、不透明な評価制度、収入ダウンなど疲労蓄積が顕著になっている実態が浮き彫りになりました。

 全日空のグランドハンドリングを行なうIAUでは、3年間の年間総労働時間と年休取得状況を調べたところ、労働時間は年々増え、年休取得は年々減っていることがわかりました。

 佐々木航空連副議長は「再建の名の下で、JGSグループではこの1年間で1727名の人員削減が行なわれ、協力会社3社の契約が打ち切られました。人員・資格者不足が顕著になっています。会社は儲けのために様々な効率化施策を打ち出すが、現場では法律で義務付けられた休憩時間さえも奪われている」と問題視しています。

 JALグループのある支店では、イレギュラーが相次いだことから、親会社の担当者が子会社従業員を朝4時半に集め注意喚起した、との報告もあります。

 日航では「JALフィロソフィ」教育による意識改革が進められていますが、賃金を大幅に引き下げられ、ゆとりや休憩時間は奪われ、詰め込み教育や不透明な評価制度でギスギスする職場。いま必要なのは、現場を直視し本音で語ることではないでしょうか。
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▼イラン航空に一時金未払いで労基署が勧告

労組 許されない行為裁判も

 イラン航空労働組合(IR)は、未払いになっている一時金の早期支払いを求めています。
 イラン航空日本支社は、従業員の一時金について就業規則で〈夏3・5ヶ月、6月10日支給、冬3・5ヶ月、12月10日支給〉と定めています。ところが夏の一時金については今だ支払われていません。労働組合は会社に早期支払いを求めていますが、日本支社は「お金がないので支払えない」との一点張りで支払う姿勢にはありません。

 IR労組は、こうした会社姿勢を改めさせるために、再三文書で一時金の支払いを求めてきました。また、組合員9名が都内三田労働基準監督署へ労働基準法24条(賃金支払い)違反として訴えを起こしました。三田労基署は、明確な労基法24条違反として、会社に対して一時金を支払うよう勧告しました。しかし会社は、労基署の勧告を無視して、いまだに一時金の支払いを拒んでいます。それどころか、新たな「合理化」案として、希望退職募集や退職金80%カットの考え方を示しています。IR労組は、団体交渉で、こうした会社の不当な姿勢を追及するとともに、イラン航空本社へ「日本の法律を守り早期に一時金の支払いを行うことを日本支社へ指導すること」とする要請書を送りました。労働組合は、「このままでは終わらせることは出来ない。裁判も視野に入れながら取り組みを強めていく」としています。

 丸山航空連事務局次長(外航連担当)は「最近の外航各社は、就業規則の見直し改悪で労働条件を切り下げようとしているのが一つの特徴として現われている。IRの一時金未払いは、就業規則は守らない、労基署の指導も無視するというもので、許されない行為だ」と厳しく指摘します。航空連はIR労組を支援するとともに、経営の横暴を許さない取組みを強化します。
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ITFアライアンス会議に参加

日航不当解雇撤回を決議

 6月21、22日の2日間にわたり国際運輸労連(ITF=440万人)の合同アライアンス会議がスペイン・マドリードで開催され、世界の航空労働者の近況報告や取り組みが報告されました。会議では日本航空の不当解雇撤回を求める決議が採択されました。日本からは日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)の宮井執行委員、近村航空連議長らが出席し日本航空の不当解雇撤回闘争の現状と、これまでの支援に謝辞を述べました。
 1日目の全体会議では、前回会議(2010年5月東京会議)以降の特徴として、アメリカのデルタ航空(DL)での組合代表選挙をめぐる経営者の介入問題やJALの不当解雇問題が報告されました。報告したパントーヤ民間航空部会議長は、DLでは、経営者の介入・攻撃によって組合が代表権を失い何万人もの労働者が希望退職で職を失ったとし、「経営者は24時間組合の弱体化に動いている」と強調しました。
 その後参加者からの報告が行なわれ、宮井CCU執行委員は、解雇争議の現状報告とあわせ世界の多くの労組からいただいた支援メッセージにお礼を述べました。日航解雇問題では、近村航空議長からの補強報告が行われ@解雇者選定が世界の行動規範や社会的責任を順守してないこと、Aそして乗員の健康面からの安全問題、B国内・国際的な連帯として解雇撤回の取り組みの広がっていると報告し、「私たちは必ず勝利します」と力強く決意を述べました。
 2日目の全体会議では、モチョ民間航空部会書記から日本航空不当解雇問題決議が提案され採択されました。
 決議文採択を受けお礼の挨拶をした宮井執行委員は、「近い将来、ITF代表団を日本へお招きし、解雇された仲間への団結を示される日が来るよう願っている」と述べました。
 宮井執行委員は「世界の航空労働者は、日航の解雇問題を許してはいけない、自分たちの問題と受け止めている。多くの人にあたたかい支援の言葉をかけられ、連帯を肌で感じることができた。必ず職場復帰を勝ち取らなければならない」と強調しました。
 アライアンス会議には26カ国、38組織の代表が参加しました。
 ※ITF本部は、日航解雇撤回決議に基づき、各国のITF加盟労組に対し、各国の日本大使館に解雇撤回を要請する文書を発信しました。
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安全会議だより(37)

今だからこそ安全の話しをしよう

雫石・ばんだい号事故から40年、

全国で安全集会を開催

 今年の安全集会のテーマは「今を考えてみよう」です。全国各地の集会で講演した元航空連議長の奥平隆さんに、講演にあたっての想いを語っていただきました。

 福島の原発事故以来、原発の安全という言葉に多くの国民が敏感になっています。今は国民全体がこの問題に向き合っていると言えるでしょう。一方、航空の安全について、国、経営者、航空労働者はきちんと向き合っているでしょうか。40年前の1971年7月、東亜国内航空が運航していたYS11型機が函館空港近くで墜落し乗員乗客全員が死亡。同じ月に全日空のボーイング727型機が自衛隊戦闘機と空中衝突、乗員乗客全員が死亡するという悲惨な航空事故が続きました。

 40年という節目に、安全会議はこの事故の教訓から「今を考えてみよう」という集会企画に取り組みました。

 当時の航空保安施設や航法援助施設の不備だけでなく、それが放置され続けてきた背景や航空事故調査の問題、そして事故が起きるメカニズムなど。実行委員会や集会での討論を通じ、参加した方々が感じた「今」は、40年前の時間の隔たりを超えて、新たな危険に直面している事でした。

 46年前に、日航、全日空が相次いで労働組合の役員を解雇し、急激なジェット化、事業拡大に進む過程で、40年前のこの事故までに、全日空ではB727東京湾事故、YS11松山事故が発生していました。さらに今回振り返った事故の翌年からは、日航の連続事故が日本の航空界を襲ったのです。

 当時の、会社方針や職場の状況は、現在、私たちが経験している現実とあまりに共通点が多く「背筋が寒くなる思い」を多くの仲間が感じることになりました。

  「安全とは、安全を追求し維持する状態である」事を、航空会社、国の機関は改めて認識し直すべきでしょう。そして航空労働者は「おかしいと感じる感覚が鈍っていないか? おかしいと感じた時に警鐘を鳴らす勇気を失っていないか」を自らの胸に問いかけ業務に向かうべきでしょう。「今」は、企業が利益を最上位に置き、現場の安全への追求努力を軽視するような風潮が生まれ、確実に安全を蝕んでいます。
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安心と安全を求められるのは航空も同じ

福島原発事故を考える

事故が少ないからといって安全に妥協は許されない

 東電の福島原発事故は、今後のエネルギー政策の行方や企業活動優先の社会のあり方など、現在の社会の有り様を様々な角度から考えさせられ、労働組合として無関心ではいられません。本紙コラム「誘導路」でも取り上げていますが、国民生活に重大な影響を与える産業の労働組合のありようも問題になります。公共交通機関の一翼を担う民間航空の立場から原発とどう向き合うべきか、航空連も検討を始めました。
 福島原発事故当初から「想定外」という言葉が横行しました。リスクマネイジメントの面でも、発生率×影響=優先度から考えると「甘い」との厳しい指摘もあります。しかも、学者、監督官庁を含めた「安全神話」によって、日本の技術そのものを大きく傷つけてしまい、情報の遅れや間違った情報開示によって国の信頼も揺らいでいます。

 7月17日に政府は、「安定的な冷却を達成」として、原発事故の収束に向けた工程表のステップ1を3ヶ月で達成と発表しました。しかし様々なトラブルは今も続いており、放射能の影響が長く続くことは容易に予想できます。
放射性物質の放射能の半減期は1秒以下から数十億年まであるようです。そして影響を受けやすいのが妊婦や幼児です。こうした影響が懸念される中、農業や漁業の生産の問題、食べ物や水すらリスクを承知で口にする生活が続いていきます。

 一方、民間航空の「想定」はどうでしょうか。自動着陸装置の信頼性は100万回に1回のレベルが求められます。そういう世界的な基準等を積み重ね民間航空は発展してきましたが、2010年の世界の航空機の全損事故率は史上最低の100万便あたり0・61回で、94件の死亡事故、786名の犠牲者となっています。ひとたび航空機事故が発生すれば、それは自動車事故と比べても安全な乗り物といったデータを振りかざしても、安全と安心を求める世論には無力でしょう。私たち航空労働者は自覚をもって安全問題には妥協しない姿勢を貫く必要があります。

 「安全神話」に寄りかかるのではなく、電力確保と安全な生活を冷静かつ科学的に話し合うべきでしょう。そして、次世代に納得してもらえる結論を導く必要があると思うのです。
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