phoenix259号 PDF259


雇用を守り続けエジプト航空が運航再開

不安や苦しさ乗り越え 訓練を終え再び乗務

 外資系企業は、本国の経営状況が芳しくなくなると日本人従業員の解雇に走りがちです。航空も例外ではなく、世界的な航空不況のなか、本国の経営状況の不振を理由に多くの外航で人員削減・リストラが進められています。最近ではイラン航空が日本支社を閉鎖し、日本人従業員を全員解雇しました。そのようななか、本国の政情不安で1年以上日本路線が休止していたエジプト航空では、日本人従業員の解雇を許さず4月16日から運航再開しました。

 4月16日に、エジプト・カイロでの訓練を終えたスカイネットワーク(SNW)エジプト航空分会の松山分会長から届いたメールには、運航再開の喜びと組合員の団結が綴られています。

 「1年3カ月近い運休期間を経まして、カイロ時間4月15日(日)より、エジプト航空の東京路線は運航再開にこぎつけることが出来ました。これもひとえに、皆様の的確なご指導と、温かいご支援の賜物と、分会員一同、心より感謝しております。とはいいましても、まだ、関空便の再開が実現していない現状では、『これにて、一件落着!』には少し時間がかかりそうです。我々で出来ることには限りがありますが、一段と全員の団結を強め、その日に向かって、出来る限りの努力はしていきたいと思っています」

 SNWエジプト航空分会には20数名の日本人客室乗務員が加入しています。運休後客室乗務員は自宅待機となりましたがねばり強く会社と交渉を重ね、日本の法律に従い雇用助成金の支払いを適用させ雇用を確保しました。地上職はワークシェアリングで業務を行い、解雇者を出さずに再開を待ちました。そして4月16日、カイロ−日本路線の運航が再開しました。

 16人の客室乗務員組合員はカイロでの訓練を終え、元気にフライトを始めました。エジプト航空で客室乗務員としてフライトするためには、エジプト政府の国家資格が必要です。保安任務にあたる客室乗務員としての国家資格があるため、会社も日本人客室乗務員を簡単に解雇できなかったことが理由の一つに考えられています。1994年には、雇用問題で客室乗務員が立ち上がり、全員がスカイネットワークに加入して雇用不安をはね返した経緯もあります。

 SNW松尾委員長は「海外のエアラインの場合、日本では考えられない事情により雇用が脅かされることがあります。エジプト航空は『アラブの春』と言われた大きな社会変革の中で運休を余儀なくされました。何もしなかれば即解雇となることも予想されますが、みんなが組合にまとまり団結したことが解雇を許さず、今を迎えることができたと思います。不安やつらいことがあったと思いますが、運航が再開されて良かった。頑張ったみなさんと一緒に喜びたい。

 私たちは、問題に対処する場合、組合員の要求は何か、そしてSNW・航空連と一緒に考え最善をつくします。それがしっかりできることが成果につながります」

 労働者がまとまって闘った大きな成果です。

※エジプト航空では職種別に、営業などの地上職はエジプト航空労組を結成し航空連に加盟し、客室乗務員はSNWのエジプト航空分会の組合員です。

259 TOPへ


■主な記事から■

▼JALグループ、相次ぐ不具合事象に危機感

▼頑張れば報われるって本当〜IBMの成果主義から学ぶ

▼JAL解雇裁判、 142名が控訴不当判決はね返そう

▼LCCの安全大丈夫。ピーチ客室乗務員は3年雇止め

▼パイロットになりたい!訓練再開せよ・日航乗組


再建と安全運航

日航、相次ぐ不具合事象に危機感

 特別安全キャンペーンを実施

 植木社長  2005年当時に酷似

 東京地裁判決は、ベテランを解雇した人選基準は安全を脅かすとの原告主張を「にわかに想定し難い」「主張は根拠が乏しい」と切り捨てました。

 その判決から10日後。大西日航会長は安全情報を発信する社内紙『Corporate Safty』で、「特別安全キャンペーンの実施にあたり」と題する所信を発信しました。3月以降、機体尾部接触やエンジン空中停止、客室内でのサービスカート飛び出し、運航乗務員の医薬品服用、航空日誌未搭載、関係機関への報告漏れ、作業中の負傷などが発生しているとして、「他部門での発生した不具合事例も常に自らのこと」「自分たちには何ができるかを組織長が自らの責務でかんがえること」をすべての職場に周知と報告を求めています。植木新社長は社内会議で、「2005年の事業改善命令が出された当時と酷似している」との認識を語ったそうです。

 こうした状況は日本航空にとどまっていません。札幌・成田・羽田・伊丹・福岡空港で日本航空のグランドハンドリング(地上支援業務)を担っているJGSグループでも、航空機への飲料水未搭載や札幌行貨物の沖縄護送、人身災害、車両接触事故が続発しており、社長名で「基本に忠実に業務を遂行する」との文書が発信されました。行き過ぎた人員削減やコスト削減至上主義は、スキル低下をもたらし、技術の伝承を断ち切っています。

 日航ユニオンは「部門別採算制の導入でコスト削減ばかりが強調される。自由にものが言える職場の雰囲気が大切」と指摘します。

 日本航空の安全問題は4月11日の衆院国土交通委員会で論議されました。4月20日の朝日新聞は「日航、トラブル続出」と報じました。

259 TOPへ


職場を蝕む成果主義

報われるのは2%の特権層

IBMから学ぶ

 「若い人は、(成果主義は)頑張れば報われる仕組みと思いがちだが、報われるのは2%の特権的処遇を受ける人だけで、ほとんどの人は報われない」。程度の差はあれ、多くの企業で導入されている成果主義。なかでも最もドラスティックと言われる日本IBMで何が起きているか。4月19日、その実態を学ぶ学習会が開催されました。講師はJMIU日本IBM支部の大岡義久委員長。日本IBMでは、激しいリストラで2万4千人の従業員が1万6千人に激減しました。大岡委員長が勤務する研究所はかつて7千人いましたが今では9百人です。

 IBMの評価制度は「1」「2+」「2」「3」「4」の5段階による相対評価。上位の「1」と「2+」は昇給しますが「2」以下は昇給しません。「2」以下の評価が続けば賃金は据え置きのまま。加えて、「ボトム15」と呼ばれる下位15%の人は減給・降格・解雇の対象とされます。大岡委員長は、「ボトム15の予備軍を含めると30%が退職強要を受ける」と話します。成果主義はいきつくと減点主義になると指摘します。

 従業員は稼働率で管理されます。稼働率は人の稼動ではなくお金に換算し、どれだけ稼いだかが稼働率になります。休暇を取れば稼働率は低下します。

 成績が悪かった人は業務改善プログラム(PIP)を受けることになります。PIPについて会社は、「すべての社員は、その能力・スキルを最大限に発揮し、お客様に本当に満足していただける価値を提供することが期待さ(れ)……できるかぎりサポートします」と説明しますが、実態は、教育に見せかけた退職強要です。

 こうした成果主義は様々な問題を抱えることになります。大岡委員長は、「上司は部下の面倒をみない。常にボトム15≠作ることに集中している。仕事を教えると自分の立場が脅かされるので仕事を教えない。不正が生まれる。チームワークは欠如する」と指摘します。

 かつて組合は従業員の約70%を組織していましたが、露骨な昇進昇格差別に組織率は激減。しかし、組合に対する職場からは信頼には厚いものがあります。従業員にとって組合ニュースは月2回、1万3千部を机上配布します。従業員にとって、組合ニュースは大事な情報源になっています。怯まない粘り強い労働組合の闘いが、働く者の展望が切り開いていきます。

259 TOPへ


東京地裁の不当判決をはね返そう

パイロット・客乗142名が東京高裁に控訴

このままでは日本中に解雇まかり通る

総決起集会で大運動を確認

 日本航空に不当解雇撤回を求めている原告団142名(パイロット原告団・客室乗務員原告団)は、原告らの訴えを棄却した東京地裁判決を不当として4月11日東京高裁に控訴しました。地裁判決は、「日航の経営状況がどんなに改善して、史上最高の利益を上げても、このことを考慮の外におき、最初に更生計画があるから整理解雇するという論理を徹頭徹尾追求した判決」(堀弁護士・集会での報告)でした。

 4月5日、都内で開催された総決起集会で挨拶に立った憲法学者の奥平康弘東大名誉教授と労働法学者の朝倉むつ子早稲田大学教授は、それぞれの立場から地裁判決を強く批判しました。

 「会社更生法の適用を受けている更生過程中だから、少々のことは経営者側でなく、労働者側が我慢するという論理になっている。法に基づけば、整理解雇をするには、余程のことがなければならないし、そうでなければ違法な解雇になる。にもかかわらず、更生過程の会社だからということで要件を緩やかにし、ごまかしている。ひとたび今回のようなことが起きると俄然、憲法でつくられてきた経営者と労働者の人間的関係がぼやけてしまい、経営の方を先行させる論理が展開していく。これは、もはや個人の問題でなく、社会の問題であり、文化としての問題であると考えていくべきである。我々は連帯していかなければならない」(奥平東大名誉教授)

 「論理的に破綻している判決だ。判決は会社更生手続きの下でも、従来の整理解雇に関する4要素を総合考慮して判断すべきと言っている。整理解雇法理の適用があるとしっかりと言っていながら、内実は異なる論理、更生計画を大前提として動じることがない。更生計画を上回る利益が上がったとしても当初の人員削減の必要性には影響しないという。(判決は)極めて矛盾している。このような労働者の人権を軽視するような判決は日本に何をもたらすのか。いかなるときも人は働き甲斐のある人間らしい仕事をする。それを通じて尊厳を確保されると思う。生きる意欲も社会への参加意識もそこから生まれる。経済不況のなかでも働く場を奪うのは最後まで回避されなければならない。そのために労働法はある。判決を覆さなければならない」(朝倉早稲田大学教授)

 集会では、京都・福岡など4つの地域支援共闘組織代表が取り組みの報告を、山口(パイロット裁判)・内田(客室乗務員裁判)両原告団長が決意表明をしました。国民支援共闘会議共同代表の金澤全労協議長は閉会挨拶で、「司法が会社の代弁をして4要件を骨抜きにした。非正規雇用者増などの雇用不安のなか、地裁判決を許せば正社員も自由に首を切られてしまう。全労働者の強い怒りをバネに闘おう」と呼びかけ、最後に「不当な判決を跳ね返し勝利するために、国民的な大運動を巻き起こそう」との決議文を採択しました。

 4月3日には京都支援共闘会議の判決報告会が、9日には参院議員会館で裁判勝利をめざす院内集会が開かれました。11日の衆院国土交通委員会では穀田共産党議員が政府の責任と安全問題を追及しました。

259 TOPへ


安全は大丈夫か?日本のLCC

ピーチ、客室乗務員は3年雇止め

欧米は正社員採用

 「3月28日(水)、長崎空港駐機中の弊社172便において出発準備中に前方ドアの非常用脱出装置が作動するというトラブルが発生しました。これにより、当該機が使用できない状況となり……計13便を欠航いたしました」(ピーチ・アビエーション社)。客室乗務員のドア操作ミスと報道されました。同社客室乗務員は先任を含め全員が訓練を終えたばかりでした。

 関空を拠点に3月1日運航を開始したピーチは、日本初の本格的LCC(格安航空会社)としてマスコミでもてはやされました。客室乗務員の雇用形態は1年契約で3年までの有期雇用となっています。乗客の生命と運航の安全を担う専門職でありながら3年までしか乗務できない雇用となっています。

 外航日本人客室乗務員の新規採用でも3年、5年の有期雇用が広がっていますが、客室乗務員のこのような雇用形態は世界的にも特異なものです。代表的なLCCであるサウスウエスト航空や英国イージージェットをはじめ、欧米の航空会社では客室乗務員は正社員採用となっています。米国客室乗務員組合(AFA―CWA・約5万人)の年齢構成によると、20歳代6・09%、30歳代14・36%、40歳代32・53%、50歳代32・61%、60歳代13・88%、残り70歳代となっています。ドイツ・ルフトハンザ航空でも30〜50歳代の客室乗務員が多く、幅広い年齢構成となっています。

 航空法は安全第一での運航を義務付けています。客乗連絡会はLCC就航直前、「LCCの客室乗務員の雇用に関する声明」を発表し、正社員登用制度の確立と契約制の正社員化を求めています。

259 TOPへ


日航乗組、会社に強く決断迫る

パイロット訓練再開へ一歩前進


 日本航空は2010年6月にパイロット養成訓練を中断。パイロット訓練生は全員地上職に職種変更させられました。このときライセンスを持っていなかった訓練生は、地上職として日本航空に残るか、希望退職に応じるか、選択を迫られました。

 日本航空乗員組合(日航乗組)は「ライセンス未取得訓練生の訓練中止撤回」要求を掲げ、昨年末闘争で取り組みました。しかし、経営は歩み寄る姿勢をまったく示しませんでした。

 会社姿勢を受けて乗員組合は全国各地で働く訓練生を訪問し、「どうしてもパイロットになりたい」という生の声を収集しました。さらに、千人以上の組合員と話し合い、訓練中止撤回の要求に結集し、争議権を背景に交渉を強めていくことを確認しました。

 春闘では、職場の関心の高まりを感じた経営は態度を変化させました。団体交渉のなかで運航本部長は、「本件を経営の議論の俎上(そじょう)に載せることを約束する」と答えました。

 乗員組合はさらなる要求の前進をめざし、高率で争議権を確立。3月28日を回答指定日、4月11日を山場に設定し取り組みを継続しました。28日の団体交渉で運航本部は努力する姿勢を見せましたが、日本航空経営としての解決の意思が確認できないことから山場にストライキ体制を取り、再回答を求めました。

 4月6日には、「今後、訓練に投入できるかの本格的な議論を開始し、議論の結果を2012年度中に示すことを経営として確認した」との発言を引き出し、ストライキ体制は一旦解除しました。団体交渉参加者は毎回100名を超え、経営を動かす原動力となりました。

 当該者はその心情を切実に訴えています。

 「破たん直前の09年12月末、内定者が集められ運航本部長に『君達には絶対にパイロットになってもらう。心配せず入社してほしい』と言われ入社を決め、大学院進学を辞めました。会社から約束を反故にされるとは夢にも思わなかった。会社が破綻したとはいえ、自分たちがこんな残酷な仕打ちを受けなければいけないのか、やり場のない悔しさをかみ殺して働いています。パイロットになりたい思いは少しも小さくなっていません。それどころか大きくなるばかりです」

 「『君達には絶対にパイロットになってもらう。心配せず入社してほしい』……パイロットになりたい思いは少しも小さくなっていません……大きくなるばかりです」(組合に寄せられた当該者の声より)

259 TOPへ
ページ先頭へ 前へ 次へ ページ末尾へ