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航空安全会議

2012年度総合安全要請で官公庁と交渉

積極性に欠ける技術規制

施設面では改善も

今年の航空安全会議の対官交渉はほぼ終了しました。総合安全要請の概要を紹介します。


誘導路面の補修継続

 ■東京航空局

【羽田空港】

 昨年誘導路面の轍の補修工事を一部実施、今年も追加で実施する予定との回答を得ました。

 LDAアプローチのためにRWY22に降下角度を指示するオフセットPAPIの設置要請については「現行基準で新たに設置することはできない」。安全会議は、「従来はなかったLDAアプローチを新設したのだから新たに基準を作って設置すべき。設置されればRWY23への誤進入を大幅に減らせる」と主張しました。

【新千歳空港】

 RWY19LへのILS設置工事は、用地買収後の予算が出ないために中断しています。誘導路H5の拡幅計画もあるとのこと。

【東京国際空港】

 ここ数年継続して要請している「スタンダードな誘導路名称」への変更や、海上空港としての防災対策の充実などの項目を中心に意見を交換しました。空港主体でさまざまな会議体が開催されており、「航空会社から意見を聞いている」と答弁になっています。

技術進歩で信頼性向上

■航空局

【航空行政】

 電子機器の使用に関しては、「旅客が正しく使用することが大切」という消極的な航空局の発言に止まっています。旅客本人が電源を切る方法を理解していないこともある現実を踏まえ、周知啓蒙やソフトウェアの改善などの対策を求めました。

【航空機整備】

 人員問題、飛行間点検、整備士の教育制度、二重確認制度等に関して要請を行いました。

 飛行間点検については、「技術の進歩、航空機の信頼性向上により、飛行前点検を設定しなくても安全を確保できる航空機が開発され審査されているので、その航空機には飛行前点検をしなくても安全を確保できると考えている」との発言がありました。

米国規制案を調査

【産業航空】

 自家用操縦士に対する技量確認や大災害時の産業航空の活動の安全確保に関して要請を行いました。

 自家用航空の操縦士に対する技量確認や維持について制度の大きな変更があり、定期的な審査制度を取り入れることとなりました。制度の本格運用に向け、適切な運用が行われるように準備を続けると航空局は答弁しています。自家用航空の安全を進める施策として評価できます。

 大災害時の産業航空の安全確保は今後も大きな課題です。

【空港】

 過去から要請していた、中部空港の誘導路名称の変更は今年8月に行われることになりました。

 那覇空港の新滑走路に関しては、計画を明らかにし安全会議と話し合いを持つよう求めました。

【空域・管制】

 関東空域再編に伴う問題、軍事空域問題等に関して要請をしました。

 関東空域再編に伴う成田・羽田空港の到着に係る高度制限や進入経路の見直しなど、運航実態を訴えながら改善を求めました。航空局の答弁は、「関東空域再編に伴って管制運用方式が大きく変更されている状況は把握している。改善が必要な場合は管制官のみならず、運航者の意見も聞きながら随時対応を図っていきたい」。

【運航乗務員】

 乗務時間制限および勤務基準に関して、「アメリカの規制案を調査していきたい」という航空局の発言がありました。安全を守るために適切な制限を求めます。

【客室乗務員】

 欧米では正社員採用が当たり前となっていますが日本の採用は契約制であり、保安要員としての専門職性が重視されていません。LCCでは「3年で雇い止め」という、経験が伝承できない雇用になっています。

 客室乗務員のライセンス制度について航空局は、「航空法で規制しているのは保安要員としての職務である」としながらも、「(ライセンス制度をとらなくても)ICAOに準拠しており問題はない。LCCであっても客室乗務員の教育訓練は審査の対象になっている」とライセンスは必要ないと答弁しています。

 機内清掃のため食事も取れないなどの厳しい勤務実態や、過密サービスへの指導を求めました。

委託観測、研修内容を改善

■気象庁

 委託観測については、前年度の要請を踏まえ研修内容が改善されたという答弁がありました。

 長年要請していた下層悪天予想図については、平成25年度の運用に向けて開発中であり、ユーザーの意見を聞きたいとの答弁でした。


■主な記事から■

▼2012年度総合安全要請で官公庁と交渉

▼最高益で改悪許されない!夏闘の成果と課題

▼苦しかった冬の家計 冬季手当復活を

▼解雇自由NO〜JAL地裁判決を問う

▼JAL・ANA決算を読み解く退職増に危機感

▼ANAグループ整備会社を再編先行する勤務改悪

▼復職目指すCAの闘い。雇い止め解雇撤回

▼読書のススメ <インパラの朝>



課題解決に向け交渉継続
労働条件を見直し離職に歯止めを

 景気の低迷、非正規労働者の増大。その一方で消費税率引き上げに「政治生命をかける」野田民主党政権。航空では国交省がLCC参入や競争力強化を理由に安全技術規制の緩和を進めています。2011年度決算で日本航空・全日空は史上最高の営業利益を上げる一方で、さらなる競争力強化をめざしたコスト削減、稼動強化の動きが強まっています。

 夏季一時金は、JALグループが2カ月回答、ANAでは年間3カ月+期末一時金(春闘回答)、

 タイ国際航空労組やマレーシア航空労組では3・5カ月など、3カ月以上の回答を引き出しています。

 さらなる稼動強化を狙った勤務改悪の動きも出ています。全日空では、ANAとANKの合併をめぐる乗員養成や諸制度の見直し問題で交渉が続けられていますが、新たに勤務問題が労使間の問題になっています。経営側は全日空乗員組合(ACA)に、米国西海岸路線や羽田深夜便等で新たな勤務を提案しました。急激な事業規模拡大による乗員不足を補うための稼動強化を狙ったものです。ACAは「乗員不足は予想されたもの、乗員養成を怠った経営に問題がある。勤務改善は労使の約束事」として、今後も本問題は労使間の課題となっていきます。

 JALグループでは、経営側は「再上場」を前面に押し出しています。諸要求にもゼロ回答姿勢ですが、日航ユニオンでは出張における勤務取り扱いの見直しの対応。CCUは労働時間管理や美容基準問題、人員不足問題を追及しました。職場から強い反発が出された美容基準では、日本航空は「規制ではなく推奨」と改めざるを得ませんでした。労働時間管理では労基署の調査も行われています。

 退職に歯止めがかからない日本航空。なかでも、年休も休憩もとれない客室乗務員の人員不足は異常事態です。今年度510名採用し9月から乗務開始、来年度は更に200名を採用します。解雇を強行したうえでの大量採用は、解雇の必要性がなかったことを裏づけるものです。

 JALグループでは、破綻以降労働条件が引き下げられ、労働環境が悪化しています。今夏闘での職場改善や労働条件回復に向けた追及は、労働組合のありようを示すものとなりました。

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苦しかった冬の家計

冬季手当復活を JGS札幌

 日本航空のコスト削減の一環として、昨年10月に冬季燃料手当廃止が強行されたJALグランドサービス札幌(JGSS)の労働者。短い夏が過ぎれば厳しい冬が待っています。

 2連続最高益を記録した日本航空。一方で毎月2万円の負担増を強いられるJALグループ労働者。あまりのギャップに出るのはため息ばかり。30代Aさんの毎月の灯油代は約3万円。部屋の暖房から給湯・風呂などに使います。「この冬に引っ越しをしたんですが、燃料代がかさみ、天引きの給料が手取り10万円の月がありました。6月でも、朝はたまに暖房を使うときがあります」と話します。

 Aさんの自宅の灯油タンクは標準的な400リットルタンク。この冬の単価は1リットル80円。1回に350リットル程度入れますので28000円です。この冬は例年になく寒かったので、月に2回入れたときもあったそうです。

 JGSSには、伊丹空港でJALのグランドハンドリングを行うJALグランドサービス大阪(JGSO)からの出向者もいますが、寮の「電気代がかかる」と訴えます。

 JGSSでは昨年4月、JALグループ他社同様に賃金が3%カットされました。加えて、冬期燃料手当の廃止です。JGS札幌労組の試算では、JGSS全社員(約300人)の燃料手当補助総額は約3600万円。JALの2011年度営業利益2049億円。誤差にも値しない削減が、北の大地でJALの翼を支えている労働者・家族の生活を苦しめています。

 日本航空の再上場は秒読みの段階に入り、株価総額は6000億円だ、7000億円だと報じられています。JGSグループ各労組は札幌労組とともに、冬期燃料手当復活で冬を迎えようと取り組んでいます。

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シンポ開催

解雇自由はノー!!

JAL地裁判決を問う


 6月18日、「解雇自由社会NO!JAL地裁判決を問うシンポジュウム」が都内で開催されました。シンポジストとして今野久子弁護士、醍醐聰東京大学名誉教授(会計学)、萬井(よろい)隆令龍谷大学名誉教授(労働法)の3氏がそれぞれの立場から発言。宮里邦雄弁護士(労働弁護団会長)がコーディネーターを努めました。

 最初に発言した萬井氏は、労働法の観点から判決の問題点を指摘しました。「判決は人員削減と解雇の区別ができてない。裁判官の労働法理の理解不足が原因。結審直前、会社側から民事訴訟法・破産法などの研究者から意見書が提出された。東京地裁は受け付けなかったが意見書に引きずられる判決となった。大量解雇という方法をとらないで再建する方法はなかったのか。社会に広く訴え問いかけることが、裁判所に真剣に論点と向き合わせるためにも不可欠」。

 醍醐氏は「はじめに結論ありきの判決」と厳しく指摘。「(判決は)解雇の必要性をこじつける言い分漁りで、不都合な証拠を黙殺した著しく公平性さを欠くもの。証拠資料の取捨選択・軽重を判断するにあたって露骨な恣意性があるし、『営業利益の増大は財産評定方法の採用に伴う一時的な費用削減効果』とする会社主張を丸呑みした。更生計画は見かけの業績回復のための計画だったのか。高裁では地裁判決をズタズタにしなければならない」と力強く語りました。

 今野弁護士は、地裁判決が労働組合や活動家の排除を狙った不当労働行為であることを強調しました。パイロットは民事36部が、客乗裁判は民事11部と違った部で扱われており、本来それぞれの部が自主的に判断すべきものが、判決では繋がりあったものとなっていることを指摘しました。

 宮里弁護士は、「本事件では解雇自由を認めるかが問われている。控訴審では、整理解雇法理の厳格な適用という視点で地裁判決が見直されなければならない」とシンポジウムを結びました。

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ANA、社員へ危機感と意識改革訴え

JAL異常≠ネ状態から普通の航空会社へ

JAL・ANA決算を読む解く 中

JAL・ANA決算を読み解く 上

JAL・ANA決算を読み解く 下

 破綻に便乗したコスト削減退職相次ぎ運航にも影響 6月19日開催の全日空株主総会には過去最高4290人の株主が出席しました。株主から、日本航空が9月に予定している再上場について意見を求められた伊東信一郎社長は、多大な業績を収めた日本航空の努力に「敬意を表する」としつつ、全日空は日本航空が会社更生法に入った時点から一貫して公正公平な競争環境の確保を求めてきたとして、「今後も同様の主張をしていかなければならない。お互いに切磋琢磨できる競争環境があってこそ利用者の利益に適う」と答えたそうです。 全日空は日本航空が2011年度決算で過去最高2049億円の営業利益を上げたことについて、社内誌『Group Origin』(5月21日付)で「JALグループ決算発表を受けて」と題する分析を掲載しています。@債権放棄による有利子負債大幅圧縮や100%減資による累積損失の一掃、A財産評定見直しによる減価償却費の軽減、B法人税支払い免除、により最高決算になったことを数字をあげて詳しく紹介し、公平性への疑問とあわせ、社員に危機感と意識改革を訴えています。

 日本航空の業績を更生計画と実績の対比でみると、2011年度の収入差は150億円程度ですが、費用の差は1500億円となっています。営業利益は計画の約2・7倍。更生計画の作為性を指摘する声さえあります。 前号で、日本航空が国内線で強みをみせていた沖縄・鹿児島・札幌路線に赤信号が灯り始め、離島路線では強みをもっていた那覇と鹿児島が全日空に追いつかれ、札幌や福岡の供給量は全日空を大きく下回っていることを紹介しました。今後日本航空は、破綻・再建という異常≠ネ状態から、普通の航空会社へ切り替わっていくものとみられます。それに伴う費用増、縮小した路線の見直しも急務となっていきます。 一方、日本航空グループの職場は、「破綻に悪乗りした異常なまでのコスト削減は、社員の意欲やモチベーション低下を招き安全にも影響を与えている。相次ぐ退職に歯止めがかからなければ運航にも影響を与えかねない」と危機感を募らせています。 ところで、過去にJALの「持ち株会社」移行に否定的な見解を持っていた全日空が、なぜ今「持ち株会社」なのか。(次号につづく)

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ANAグループ 整備会社を再編し新会社設立

10月設立、1200名規模に

 全日空は10月にグループ整備会社2社(FTC・TAC)を再編、1200名規模の新会社「ANAラインメンテナンステクニクス」(NLC)を設立します。事業内容は航空機の小修理以下の整備、飛行間の運航整備(ライン整備)を中心に行う計画です。設立目的は、「FTC、TACで培ってきたライン整備の専門性を基盤に、更なる総合品質の向上による『持続的な競争優位性の発揮』の達成に向けて、総合品質の基盤となる人材育成環境の整備や社員の発展成長/将来性の担保に向けて、グループ事業領域を再編することにより新たなe.TEAM体制へとステップアップを図っていく」。従業員1200名のうち正社員400名程度、出向者社員800名程度としています。契約社員、嘱託社員、派遣社員の採用も予想されています。

 新会社の年間所定労働時間は1972・5時間とし、「航空輸送事業計画に柔軟に対応できる勤務を事業所毎に設定する」としています。羽田では7月から、稼動強化を狙い午前2時30分終了勤務が導入されます。新会社設立を見据えた形での勤務見直しが先行しているようです。

 全日空は来年持ち株会社に移行します。今回の再編も無関係ではないとみられています。

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JAL契約CA裁判

 上司による執拗なパワハラを受けたうえに不当解雇された問題をめぐり争われている日本航空契約制客室乗務員不当解雇事件。東京地裁は、退職強要を一部認め日本航空に損害賠償を命じたものの、職場復帰は認めませんでした。原告は職場復帰を認めなかった東京地裁判決は納得できないとして東京高裁に控訴。その証人尋問が7月17日午後2時から809号法廷で行われます。日本航空で契約制客室乗務員が導入された当時の客乗組合(現CCU)委員長、飯田幸子さんが証言台に立ちます。

 控訴審では、担当した青柳裁判官の公平さを欠く不誠実な態度が問題になり、原告側は、裁判官の交替を訴える「忌避申し立て」をしました。しかし申し立ては東京高裁・最高裁いずれも却下。裁判は青柳裁判官の下で再開されることになりました。

トルコ航空CA裁判

 5月18日、トルコ航空客室乗務員の解雇撤回を求める裁判が東京地裁で開催されました。解雇撤回を訴えているのは成田―イスタンブール路線に乗務していた13名の日本人客室乗務員。2008年9月、劣悪な労働環境を改善しようと組合を結成したところ不当解雇されました。彼女達は派遣会社に採用されトルコ航空に派遣されていました。トルコ航空が派遣会社との契約を打ち切ったことで解雇となりました。復職を求めて13名が提訴したのは09年1月29日。3年余り進行協議を重ね、ようやくこの日、船田トルコ航空ユニオン委員長とテューバトルコ航空元日本支社長の証人尋問が行われました。

 これまでの証拠調べでは、募集も訓練も仕事上も客室乗務員でありながら「通訳」の名目で派遣され賃金はトルコ人客室乗務員の半分だったこと、有休や社会保険・時間外労働手当等はいっさいなく100時間を大幅に超えて乗務させていたこと、組合結成後解雇されたこと、偽装請負で職安法違反の実態があったこと等、さまざまな問題が明らかになっています。

 今回あらたに、EU航空局とトルコ航空局間には「客室乗務員は直接雇用でなくてはならない」との規定があり、派遣は認められていなかったことが判明しました。規定違反の事実からも、トルコ航空は解雇した日本人客室乗務員を直接雇用として職場に戻す責任があります。

 次回法廷は8月22日10時30分527号法廷です。原告は「多くの傍聴、ご支援をお願いします」と訴えています。

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