phoenix268号 PDF268


■主な記事から■

▼13春闘―賃金引上げ・勤務改善でデフレ脱却
▼787運航停止、トラブルの原因徹底究明を
▼グラハン全国会議で冬季手当闘い全面支援確認
▼頼りになる組合が一番の薬、専門医が証言
▼緊急報告―国家公務員の賃下げ、ここが問題
▼読書のススメ―話題の「ブラック企業」


 アライアンスや合併など、世界的な規制緩和や競争激化を背景に、航空各社は様々な経営戦略を打ち出しています。多くは人員削減などが中心になっています。
 航空労働者にとっては雇用や労働条件に直結する問題です。とりわけ外航労働者にとっては、海外の本社で施策が決められることから、より困難な状況を強いられていますが、本社に出向いての直接交渉や本社労組との連携など、工夫した取り組みも行われています。困難を抱えながらも組織拡大を進めるユナイテッド航空労組を紹介します。

2010年に合併を合意したユナイテッド航空(UA)とコンチネンタル航空(CO)。今年3月までには登記が終了し、名実ともに統合される予定です。雇用や労働条件低下の不安の声が職場から出されるなか、UA労組はこの一年間で20名を超える組合員を増やしました。
 COとの合併は仕事のやり方から労使に関わるルールなど、様々な変化をもたらしました。丸山UA労組委員長は、「米国本社のCEOはCO出身者で、UA出身の副社長はみな交代した。こうした動きは日本国内でも現れている。営業部門では仕事のやり方も変化し、時間外や休日を利用した様々なイベントに力を入れるようになった。COには労働組合がなかったため、会社が言ったことが決まり事になっていた。労使のルールをきちんと認識してもらうことに労力を費やした」と話します。

 UA本社ではパイロット組合(ALPA)と客室乗務員組合(AFA)が5年協約に合意しました。地上従業員を代表するIAMとの合意が残っています。

 UA労組の活動の大きな転機となったのは、2009年5月のケータリング部門売却問題でした。UA本社は、経費削減の一環として日本のケータリング部門をゲートグルメ社に売却し、従業員を転籍させようとしました。しかしUA労組の取り組みにより、雇用と異動先を社内に確保させました。この経験が今に繋がっています。

 UA労組は年2回米国本社を訪問し、本社幹部と話し合う取り組みを続けています。話し合いによる情報収集と、労働組合の立場から日本の現状をきっちり伝えることで、労使紛争の芽を摘むのも目的です。本社でつかんだ情報は、可能な限り日本支社全体で共有するようにしています。こうした活動には立場の違いを超えた支持が寄せられ、UA労組の信頼に繋がっています。

昨年3月、UA労組は毎年1万円の賃金上げや一時金に関する3年協約を日本支社と締結しました。新年早々の交渉では、安倍新政権の2%インフレが論議され、2%のインフレがあった場合は賃上げについて協議することを確認しました。次回協約交渉は2015年3月ですが、一年前から予備交渉が始まる予定です。そのためには組合員の学習強化が必要との認識から、今年は組合員の学習に力を入れる予定です。

 「JALの破綻、整理解雇は他人事ではありません。しかし、しっかりと理解している人は多くない。いざというときのためにも、JAL解雇問題をきちんと学習していきたい。COの5名の契約社員のうち3名が組合に加入した。当面の目標は3名の正社員化です。アライアンスに伴う会社の動きにも注意を怠たらないようにしなければならなりません。3年協約を締結したからと言って、決して安心はできません。必要があればいつでも交渉しなければなりません」

 13春闘を前に、丸山委員長は力強く語ります。

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引き上げ安全基盤強固に

国民・労働者に犠牲と痛みを押し付ける政府・財界。コスト削減「合理化」で労働者に犠牲を強いる航空経営の儲け優先の施策。職場から要求を作り上げ、その実現に向けて航空労働者の底力を発揮するときです。13春闘にむけた賃上げや職場改善要求作りが本格化しています。

 先の総選挙で安倍内閣が再登場しました。安倍内閣は経済政策に「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げています。

 デフレ脱却として「2%の物価上昇率目標」を設定し、そのための金融緩和を日銀に強く求めました。しかし大企業は260兆円ともいわれる内部留保を抱えており、金融緩和が経済全体の活性化につながるか疑問視もされています。

 「国土強靭(きょうじん)化」と称して、200兆円もの大型公共事業も打ち出しています。かつての自民党政権が推し進めた「バラマキ政策」の復活であり、国家の財政が借金漬けに陥った、従来型の経済政策を繰り返そうとしています。一歩間違えば借金がますます肥大化する、危うい政策です。

 デフレ不況から抜け出すうえで最大のカギは内需拡大にありますが、GDPの約6割を占める民間消費支出、「国民の懐(所得)をいかに増やすか」という姿勢は見られません。金融緩和と公共事業で見せかけの「経済成長」を演出し、消費税大増税を予定通り実行しようとする意図が透けて見えます。「アベノミクス」といわれる経済政策に、希望を託すことはできません。

 国民の所得を増やすには、労働者の雇用確保と賃金の引き上げが重要です。13春闘の大きな意義がそこにあります。

 航空界においては、JAL破綻を機に各社は経営危機を前面に打ち出し、賃金・一時金の切り下げや勤務改悪、雇用の非正規化拡大など、労働者犠牲の施策を推し進めました。その結果経営状況は大きく好転し、2012年3月決算では、全日空970億円、日航は2049億円の大幅営業利益を計上しました。それでも各社は、「LCC元年だ」「強まる競争に耐えうる強靭な経営基盤を」と、コスト削減の手綱を緩めていません。

 航空の各職場からは、「厳しい生活実態を何とかしてほしい」「人員を増やしてほしい」「きつい勤務を改善してほしい」といった声が強く上がっています。労働条件改善は安全運航確保に不可欠です。

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 最新鋭機、ボーイング787型機(B787)のトラブルが相次いでいます。国土交通省と米連邦航空局(FAA)は、原因のひとつとみられるバッテリーの安全性が確認できるまで運航停止を命じました。FAAによる全面的な運航停止は、アメリカン航空のDC10がエンジン脱落で墜落した1979年以来のこと。34年ぶりの全面運航停止命令が事態の深刻さを浮き彫りにしています。B787は全世界で約50機が納入され、日本では全日空が17機、日本航空が7機保有していいます。
 ボストン空港駐機中の日航機出火と、飛行中に操縦席に煙がたちこめ高松空港に緊急着陸した全日空機は、ともにバッテリーの不具合が原因とみられています。
 B787の特徴のひとつは、従来のように油圧で主翼などを動かすのではなく、電気を動力源にしています。バッテリー不具合はB787の心臓部に関わるトラブルといえます。バッテリーは日本製のリチウムイオンバッテリー。過電圧や過電流によって高温になりやすく、緊急着陸した全日空機のトラブルでも「前方電気室でメインバッテリーが変色し、電解液が漏れ」(全日空発表)が確認されています。日乗連(日本乗員組合連絡会)によると、航空貨物として輸送していたリチウムイオンバッテリーの発火が原因とされる墜落事故も起きています。

 問題は、トラブルの原因がバッテリー本体にあるのか、それともシステムそのものにあるのかです。リチウムバッテリーはパソコンや電気自動車などにも使用されており、過去には、不純物混入が原因でパソコンから出火する事故もありました。

 B787のトラブルにはバッテリー関係以外のものもあり、関連性も含めた徹底究明が必要です。

 B787は2011年11月に、全日空が世界初の営業運航を開始しました。本紙は12年2月号(256号)で、不具合メッセージが多いことやメーカーや運航会社の思惑などを報じました。


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 航空連グランドハンドリング労組連絡会(グラハン連)は1月20と21日、福岡市内で全国三役会議を開催しました。会議では、冬季燃料手当廃止で2度目の厳しい冬を強いられているJGS札幌の状況や、アライアンスとグラハンの現状、全日空グループにおける空港1社化、組織強化や直面する「13春闘」などについて、熱心な話し合いが行われました。会議には6労組・3地連・JAL解雇争議原告が参加しました。
 例年に比べ寒さが厳しく雪が多い北海道・新千歳空港。JGS札幌労組の上原書記長は、「一時金2カ月が支給されたが、灯油代は月300リットル、約3万円かかる。家計への負担は大きい。雪の朝の作業は、Pドーリー(大型貨物を運ぶ非自走器材)の除雪から始まる。時には積雪が40センチメートルにもなる。気温がマイナス20度では車のエンジンのかかりも悪くなる。機材が小型化されボーイング737が増えた。貨物は毎回3トンくらい取り降ろしするが、バラ積みのため手作業で行っている。腰にかかる負担が大きく腰痛者が増えている。腰痛対策は春闘の重要課題だ」と報告しました。

 成田空港で外国社の地上業務を行っているJAS新労組・村上副委員長は、「昨年の春闘では若年層に厚くなる賃上げを引き出した。そのことが組合への信頼に繋がった。労働条件を引き上げないと良い人材の確保ができないし仕事もとれない。安かろう悪かろうでは航空会社から相手にされない。外国社の地上作業は、必ずしもアライアンス別に棲み分けられていない。これまでの実績や品質などが大きい。コストだけで決まるわけではない」と、調査結果を基に報告しました。

 組織課題では、各労組の経験が語られました。複数の組合が存在する職場からは、「組合ニュースはわかり易くが大切」との指摘がありました。「要求作りにあたっては従来の考えにとらわれず掘り下げて検討することも大事」など、踏み込んだ意見も出されました。

 健康問題に関する発言が多く出されたことも、会議の特徴でした。

 JAL不当解雇撤回争議では、原告から現状の報告と支援の訴えがされました。あわせて平井大阪地連事務局長からは、「JAL解雇原告団を支える会」の会員拡大が、参加各労組によびかけられました。

 賃上げや諸要求の前進とあわせ、グラハン連の重点課題として、JGS札幌労組の冬季燃料手当復活を勝ち取る闘いへの全面支援を確認しました。

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 2010年の大晦日に日本航空のパイロットと客室乗務員165名が不当解雇されて、2回目の大晦日が過ぎました。不当解雇撤回を求めた裁判は東京高裁に舞台を移し、昨年12月6日にはパイロット裁判が、同14日には客室乗務員裁判の控訴審が始まりました。原告団は、何としても高裁で逆転勝利判決を勝ち取ろうと、年明け早々から活動を始めています。

 1月は労働組合・団体の新年会や旗開きが開催されます。原告団は1月4日の名古屋市職員労働組合「旗開き」を皮切りに山梨県や大阪府・福岡県・栃木県・新潟県など、1月だけで130カ所の新年会や旗開きに参加し支援を訴えました。原告団事務局の齋藤さんは、「昨年は地裁判決に向けて沢山の団体から参加依頼がありました。今年は昨年より2〜3割多いように思います。皆さんからは本当に元気をいただいています。何としても勝利判決を勝ち取らなければならないとの思いを強くしていいます」と話します。 宣伝行動も各地で取り組まれており、1月10日には東京有楽町で女性団体が宣伝行動を、同19日には今年最初の銀座デモを140人の参加で行いました。週末の買い物客で賑わう銀座に「不当解雇を撤回せよ」のシュピレヒコールが響き渡りました。

デモに参加した客室乗務員原告の岩間幹子さんは、解雇された無念をこう語ります。
 「整理解雇は、年齢基準や病気で休んだことのある人、JALにとって煙たい存在である労働組合役員などをターゲットにした、人権を無視した理不尽なものです。クリスマスの夜、華やかに彩られたイルミネーションが輝き、街並みが美しい姿に変わっているのを見るのが私の楽しみで、心がわくわくする嬉しい季節でした。2010年12月9日に解雇予告通知を受けてから、その気持ちは一変しました。イルミネーションを見るたびに当時の様々な出来事がフラシュバックし、思い出され、悲しくむなしく感じるようになりました。今のJALは私には、鶴≠ナはなく黒鷺(黒詐欺)≠ノ映ります。早く美しい鶴になって欲しいと願っています。この2年間、客室乗務員の仲間と多くの支援者に支えられ、勇気づけられ、人々の温かさに触れ、感謝し、頑張ってきました。このままでは絶対に終わらせたくない。必ずあの空へ戻ります。本当の鶴に蘇らせる、真の再生に協力したい気持ちが強く募ります」
 裁判を支える弁護団には全国から多くの弁護士が加わり、総勢750名の大弁護団になっています。
 パイロット原告団の清田事務局長は高裁勝利判決に向けた決意を語りました。
 「東京地裁判決は、労働者の権利を保障している憲法に反している。国際常識からも外れている。司法を正すためにも精一杯闘う」
 次回控訴審は、パイロット裁判は2月7日、客室乗務員裁判は3月1日。

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 昨年10月3日、AASC岡田裁判の法廷で主治医が証言台に立ち、岡田さんの症状や治癒に必要な職場環境について証言しました。
 岡田さんは、異動・いじめ・降格など執拗な嫌がらせを受けうつ病を発症しました。その後薬物療法、認知行動療法、各種ストレスマネージメントなどの治療を受け、社会的に「寛解(治癒)」と診断されるまでに回復し職場復帰しました。しかし復帰後も会社は、孤立した受付業務に配置したうえに、インターネットの配線を切るなどの嫌がらせを繰り返します。岡田さんは不安と怒りを主治医に訴えました。
 医師は、配置された受付業務がさらなる「苦しみ」を与えたと判断。職場復帰はリハビリにはならず、症状も「治癒には至らず慢性化している」と判断し、うつ病の治癒のためには現在の職場は適切ではなく、他の部署に配属されることが望ましいと診断します。会社は診断に従わず、「業務とうつ病の因果関係はない」として受付業務を継続させました。岡田さんはAASCの労働組合にも相談に行きますが、「中立」の立場をとって取り上げようとしません。労働局も岡田さんの申し立てを受けて斡旋をしますが、会社は拒否しました。

 岡田さんはスカイネットワーク(SNW)大阪支部に相談し、加入します。大阪支部はAASCの労働組合に岡田さんの問題に取り組むよう申し入る一方、会社との団体交渉を重ね職場環境の改善を追及しました。こうした状況の変化は、岡田さんの症状にも現れました。SNWが関わったことで、岡田さんの症状も良い方向に向かい始めました。主治医は法廷で証言しました。「SNWに問題を持ち込んだことが、よりよい環境をもたらしたと理解します。そうすれば治るということ、あるいは復帰ということで、お薬をばんばん増やすとか、下手な精神療法をやるよりも、(SNWが岡田さんにとって)ずっとパワーになると、私は判断します」。

 労働組合は専門医の診断や治療の分野に取って変われるものではありません。しかし、不安や怒りで孤立している罹病者の声を聞き、サポートし、会社と交渉しながら改善をはかっていくという、労働組合でなければできないことあります。岡田さんのケースは、労働組合の存在が苦しんでいる労働者の救いにつながるという、貴重な体験をもたらしました。

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国公労連(日本国家公務員労働組合連合会)の一員として、「公務員賃下げ違憲訴訟」を闘う国土交通労組。国家公務員賃金引下げの問題点を2回にわたり報告します。

 国家公務員は憲法で定められた労働基本権が制約され、労使交渉で賃金改定を決めることができません。ストライキも認められていません。その代償として、人事院が民間企業の給与水準を調査し、その結果に基づいて賃金改定を国会と内閣に勧告します。民間準拠による人事院勧告制度です。

 しかし政府は昨年2月に成立した「国家公務員の給与の改定および臨時特例に関する法律」により、昨年4月から2年間、人事院勧告によらない国家公務員給与平均7・8%減額を実施しました。法案に対して人事院は、「本院の勧告を踏まえることなく、国会に提出されたことは遺憾」との考え方を表明しました。理由のひとつに、「国家公務員全体の4分の1弱が属する職員団体と合意に至ったが……他の職員団体との合意には至っていない」「団結権が認められていない職員……職員団体に属していない職員……からの理解と納得を得るための手続きは採られていない」を上げています(平成23年人事院勧告)。国公労連は減額に同意していません。労働者に一方的に不利益を課す今回の減額は、人勧制度と国家公務員法をないがしろにする暴挙です。

 国家公務員の賃金については、マスコミを通じて「公務員は高給取り」「国家財政が危機的状況にあって公務員の賃金を下げは当然」との論調が流布されています。しかし、国家公務員給与は民間企業の平均賃金に準拠するよう制度化されており、昨年の人事院勧告は「(7・8%)減額後は民間給与を7・67%下回っている」としています。高級官僚以外の一般職員の賃金は民間企業と同水準にあります。

 国家公務員賃金引き下げは、民間の賃金抑制の理由づけに利用されます。〈次号に続く〉

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