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■主な記事から■

▼新春座談会−誇りと責任に見合う労働条件取り戻そう
▼最高裁で逆転勝訴必ず!JAL不当解雇撤争議
▼ITFニュース、スイスポート会議報告(上)

 昨年の新年号で私たちは、昨年1年を次のように考察しました。
 「安倍政権が誕生して1年が経過しました。震災復興、原発問題、デフレ対策、消費税増税、TPP、沖縄の米軍問題、一票の格差と選挙制度、日中関係などが課題となっていましたが、安倍政権が打ち出した政策を振り返ると、アベノミクスと言われる『三本の矢(異次元の金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略)』、今年4月からの消費税率の5%から8%(15年4月から10%)への引き上げ、国民の知る権利や表現の自由など基本的人権を縛る特定秘密保護法の制定、『企業世界で一番活動しやすい国』へ労働規制の緩和を進めようとしています」「安心して家族と暮らせる社会、雇用不安のない社会をつくるための景気対策なのか。国民生活をどのように立て直すかが求められていたにかかわらず、暴走する安倍政権に批判と怒りがふつふつと沸き広がっています。消費税率の引き上げや国民の目と耳と口をふさぐ特定秘密保護法への批判と怒りはますます大きくならざるをえません」

 国民との矛盾は何一つ解消されないまま新年を迎えました。安部政権は昨年11月、突然衆議院を解散し総選挙に打って出ました。「いまのうちに解散したほうが批判を受けずに済む」との打算からと言われています。いわば、延命のための選挙。結果、与党が改選議席を維持することになり、その点では、目論見は的中したといえます。しかし議席維持は小選挙区マジックによるところが大きく、あらためて、「民意を歪める小選挙区制」が浮き彫りになりました。選挙後の朝日新聞世論調査では、「安倍政権の政策が評価されたから」は11%、今後安倍首相の進める政策に「不安の方が大きい」は52%との評価。与党が完敗した沖縄に、安倍首相は足を踏み入れることはありませんでした。民意を無視する安倍政権を象徴的する出来事です。

 航空業界では、米国を中心に大手航空会社の好決算が報道されています。国内ではJAL・ANAは好決算が予想され、LCCは明暗が分かれました。スカイマークは経営失策によって青色吐息状態。行政の指導によりJAL・ANAが支援と報道されています。

 その一方で、勤務改悪や稼働強化の進行により、労働者の状態は悪化するばかりです。「休みが取れない」「休憩のない」客室乗務員の勤務。パイロット不足対策が航空行政の課題になっているにも関わらず離職が後を絶たない日本航空。事故トラブルの多いことを経営も認めるグラハンの現場。勤務改善や賃金引上げはまったなしです。

 迎える2015年。闘いの場を最高裁に移した日本航空の不当解雇撤回裁判。解雇自由を許さず、企業に社会的責任を課す重要な裁判として内外で注目されています。世論をいっそう広げ、何としても逆転勝利判決を勝ち取らねばなりません。

 直面する15春闘は、昨年末闘争の成果を土台にさらなる職場改善に向け、ストライキを背景にした闘いが求められます。

 ILO(国際労働機関)が提起するディーセントワーク(人間ら働きがいのある仕事と生活)に近づけるためにも、ITFを通した世界の運輸労働者との連帯が重要さを増します。

 そして、利益至上主義から安全第一、公共性重視に転換させるとともに、職場に誇りと活力を取り戻し、安全安心の航空産業を築く取り組みを強化しなければなりません。私たちはあらためて、「労働条件は安全を支える基盤」であることを確認し、安全運航の担い手にふさわしい労働条件に引き上げさせましょう。



 航空各社のコスト削減利益中心主義が強まるなか、勤務改悪による稼働強化、行き過ぎた経費削減、成果主義、パイロット不足や整備士不足などなど課題山積です。各職種の現状と改善の方向性を語り合っていただきました。出席‥赤坂副議長(外航担当)、片岡副議長(乗員担当)、佐々木副議長(グラハン担当)、萩原幹事(客乗連事務局長)


 編集部 14年末闘争は一時金で成果をあげましたが、賃金や勤務など課題も山積しています。各職種の近況からお話しください。
 萩原 客室乗務員では外航での雇い止め、内航では勤務改悪による稼働強化や年休・休憩がとれないこと、高稼働の中で体調を崩す人や退職者が後を絶ちません。アリタリア航空では成績を理由に解雇問題に発展し、労働審判に訴え和解した事例もあります。デルタ航空では1年契約を30回更新している契約制客室乗務員もいます。しかし最近、契約期間途中で雇止めされた契約制客室乗務員がいます。こうように問題山積ですが、JCC(ジャパン・キャビンクルー・ユニオン)では、KLMで80名を超える契約制客室乗務員を組織化し、今雇用延長を求め交渉を継続しています。

 片岡 パイロット不足が当面する大きな課題です。昨年3月30日から羽田空港の昼間帯の国際線発着枠が拡大されました。ANAに11往復、JALに5往復配分されましたが、便数が増加するなかで、パイロットが増えなければ一人あたりの勤務時間を拡大することになります。JALでは破綻後、ロンドン・パリ・ロサンゼルスの長距離路線は一泊3日で乗務しています。一部改善はされているようですが職場からは悲鳴があがっています。11月末で年間乗務時間制限の900時間に迫る850時間の乗員がかなり出たとも報告されています。ANAでは、羽田の国際線発着枠11往復を獲得したものの、乗員組合との勤務協定ではパイロット不足になることから、稼働強化する勤務協定に変更せざるを得ませんでした。恒常的に上限に近い勤務をアサインされている状況もあるようで、疲労管理の観点から問題があります。

 赤坂 外航関係では、アジア系はLCCとの競争、米系はデルタ(DL)、ユナイテッド(UA)ともにアジア路線の減便と、成田をハブとしたビジネスの転換。EU系ではAFやLHで昨年本国のストライキで運休が相次ぎました。EU系に限らず羽田便に移行したいようですが、国交省との関係もあり成田路線も維持しなくてはならず経営的には負担になっているようです。雇用問題では萩原さんが話されていたアリタリア、加えてエミレーツ、中国東方航空にみられるに、日本の法律を無視した解雇事件が相変わらず起きています。

 佐々木 グラハンも有期雇用が増えています。JAL系では破たんを理由に強権的に賃金制度を改悪され、勤務もきつくなっています。年休が取れない、休憩が取れないは、職種を超え共通の問題になっていますね。
 全日空系では国内7空港を一空港一運営会社に再編を進めてきましたが、昨年4月の羽田空港によって7空港の再編が完了しました。羽田空港で全日空のグラハンを行うベテラン労働者は「再編は労働条件引き下げの歴史」と話すように、2010年、2014年の2回の再編統合によって賃金制度を改悪されています。全日空のこうした運営体制は新たな形態として注目しており、JALグループでも何らかの動きがあるのではと注視しています。

 健康問題や非正規社員の増加、新規グラハン会社の参入も近年の特徴でもあり、低賃金や勤務のありかたなど多くの問題が山積しているのが現状です。

 編集部 こうした問題の背景にあるのが、一つは政府の雇用政策、一つはたたかう労働組合の組織率の低下が指摘されています。

 萩原 客乗でみると、1994年に契約制客室乗務制度が導入され雇用環境は大きく変化し、正社員採用が当たり前だったのがすべての航空会社で客室乗務員を採用する際に契約制を導入しました。
 佐々木 グラハンでは、関空・中部空港開港を契機に新規グラハン会社の参入が始りましたが、国内ではJAL系、ANA系のグラハン会社の占める割合が大きい。そこでは、形式的には親会社と業務の請負契約を結んでいますが、実態は支配従属の関係にあり、人件費が総費用に占める割合が約80%のグラハン会社にとっては、契約引き下げは即賃金に影響します。近年は業務を請け負う際に入札が導入されており、こうしたことが労働条件引き下げ圧力になり、非正規社員の拡大要因になっている。

 片岡 国交省の試算でパイロット不足がはっきりしているが、日本は20年東京オリンピックやそれ以降の航空需要を見据え、首都圏空港の発着枠拡大に向け羽田空港と成田空港の首都圏空港容量を滑走路の増設と飛行経路の見直しなどで年間最大で7・9万回増を計画していますが、事業計画が追いつかないために、見合った乗員養成が出来ていない。
 LCCでは就航当初に大量に採用した高年齢のパイロットが、今後退職するためパイロット不足が深刻です。
 赤坂 米系のビジネスの転換はアライアンスとの関係もありますが、航空業界全体のトレンドが「器を小さくして、燃費や搭乗率を上げ、ダイレクトで飛ばす」に変化している。DLではケータリングの売却も噂されています。
 萩原 成果主義が導入されていますが、これも問題があります。客室乗務員の仕事は客観的に評価しにくい。結局、会社はモノ言う人を低評価し、あるいは所属組合で差をつける。法的には年に一度の緊急救難訓練に合格が必須なので、セニョリティ(先任権)に応じて昇格させるなど、透明性のある昇格、評価基準とすべきです。チームワークが大切な業種なのに、ある年齢で業務資格が剥奪したりするのは、人間関係、コーディネーション上の問題を生じさせることになる。

 赤坂 外航では早くから査定が導入されており、査定が賃上げや一時金にも反映されている。フェデックス・タイ航空労組は二重査定による差別と会社に訴えている。

 佐々木 グラハンも成果色の強い賃金制度が導入されています。JGSグループ各社の賃金制度をみると管理職に昇格しなければ40代半ばで賃金は頭打ちになってしまいます。評価の仕組みも相対評価なので、どんなに頑張っても平均以上の評価を得られるのは全体の25%ぐらいのようです。
 萩原 近年多くの企業でコンプライアンスが強調されていますが、会社自ら法令順守しなければならない。しかし、勤務などで法違反が指摘される。JALでは国際線日帰り乗務(長時間勤務)での「休憩時間なし」は、労基署にも訴え改善の取り組みを行っています。年休取得難や、勤務変更で休日までもがころころ変わる問題もある。ANAはJALに比べ休日が固定されているので良いとの評価もあるが、平均勤続年数が6年とJALの10年を大幅に下回っており、そこには過酷な労働があることは容易に想像できる。

 佐々木 休憩時間問題では、グラハン労組でも労基署相談している。パワハラ問題もいくつか報告されているが、会社の対応はぬるい。
赤坂 パワハラでは外航でもあり、タイ航空では訴訟問題に発展した。 編集部 今後どのような取り組みを強化していきますか。
 片岡 国交省は航空会社を後押しするため、パイロットの乗務時間制限の延長や服用可能な薬を緩和し、稼働を上げることも考えているようです。疲労を緩和するための取り組みはICAOでも積極的に取り組まれており、逆行するような施策を認めるわけにいきません。利用者への啓蒙活動とあわせ安易な規制緩和を許さない取り組みを強めていきたい。2020年に向け、乗員組合から経営に対して事業計画を明らかにさせると共に、乗員養成について経営に要求していくことも必要です。
 萩原 経営者があまりにも安易に人を切り捨てることに怒りを覚えます。きちんとした法律を整備することが必要だと思いますが、現行の改正労働契約法でも、無期労働契約と実質的に同視することができる状況にある場合、労働者が「今後もずっと契約が更新されるだろう」と合理的に期待するような状況にある場合には雇い止めは出来ません。法律を活用しつつ、雇い止め回避の努力を企業に求めていきたい。一人ひとりが改善に向けて声を上げていくことも必要です。労働者なくして企業は成り立たないのですから、そこに自信を持って立ち上がってもらえるよう取り組みを進めたいと思います。
 佐々木 航空産業の中でグラハンは目立つ職種ではありませんが、安全運航に欠かせない業務であり、そこにこそ展望があります。安全運航を支えるにふさわしい労働条件を遠慮せず要求する。そのための学習強化が欠かせません。会社は利益追求の中で様々な矛盾も抱えています。そこに遠慮なく切り込むことが求められます。
 赤坂 昨年、航空連はITF(世界運輸労連)に正式加盟しました。外航労働者にとっては本国の情報収集はもとより本国の労働組合との連携強化につながります。このつながりを有効に最大限いかし、雇用と労働条件向上につなげたい。

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 日本航空に解雇撤回を求め最高裁で闘っているパイロットと客室乗務員の原告団は昨年12月9日、「リメンバーアクション」を行いました。2010年末に解雇通告を受け4年目となる日を忘れず、日本航空本社までのデモと街頭宣伝で早期解決を求めたものです。
 当日は衆院選挙期間中にもかかわらず、パレードのスタート地点である北品川の聖蹟公園に350人の支援者が集合。本社前までシュプレヒコールを続けながらデモ行進を行いました。デモ隊が本社に到着すると、すでに集まった支援者たちと合流。500人以上で本社前宣伝行動が始まりました。この行動に対して日本航空は、本社ビルの1階ロビーの窓をカーテンで閉ざし、ロビー内のエスカレーター前には7人もの職員を配置しました。行動に参加した醍醐聡東京大学名誉教授は、「JALの倒産劇は必要なかった。整理解雇などせずに十分再生の道はあった」と訴えました。山口パイロット団長は「職場ではパイロットが退職し人員不足に陥っている、なぜ私たちを戻さないのか」と、内田客乗団長は「解雇された4年前の憤りを今も忘れない。職場復帰するまで引き下がらない」と訴えました。

 JAL不当解雇撤回裁判原告団と支援共闘会議は最高裁宛の署名活動に取り組んでいます。12月19日に提出した段階で、個人署名は16万3千筆、団体署名5100筆となりました。毎回の要請行動では最高裁第1小法廷(パイロット訴訟)と第2小法廷(客乗訴訟)の裁判官一人ひとりに要請書を渡し、参加者からの訴えも行われています。会社更生下で行われたJALの整理解雇は裁判所、管財人、弁護士が一心同体となって行った不当労働行為であり、このことを最高裁が判断する初めてのケースです。憲法を守り正義を貫く判断を求めていかなければなりません。


 上告審における代理人は、高裁の代理人がそのまま代理人となるわけではありません。上告審の代理人となっていただくため、原告団は全国の弁護士に代理人就任要請願いを呼びかけました。その結果、全国から1035人の弁護士が呼びかけに答えてくれました。これは高裁における代理人数をはるかに超え、今後も増えていく傾向にあります。原告団は、総数1057人の代理人とともに、解決に向けての活動を進めていきます。
 日本航空は2015・16年度、短期で加齢乗員を採用するという計画を乗員組合に示しました。目的は現役の機長を関連子会社に出向させるためとされています。
 日本航空は2010年12月末に55歳以上の機長を解雇しました。パイロット不足という航空界にあって、解雇対象にならなかった機長たちは現在、60才以降も働ける職場としてLCCを選択しています。そのためパイロットの流出は解雇以降170名を超え、その勢いは止まっていません。今回の提案は、日本航空がパイロット不足を認めたことにほかなりません。人員補充は解雇した81名のパイロットを職場に戻すことから始めなければなりません。

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 ITF民間航空部会・地上職委員会は13年11月にスイスポート会議を開催しました。同部会のモチョ書記は会議開催の目的について、「スイスポートは急速に拡大している。各国の子会社を買収しグローバル化している。また、一部の国においては組合に対するアプローチを変化させている。マスコミの報道や、書記局が加盟組織に依頼したアンケート調査の回答を考慮すると、これらの動きが組合にどのような影響を与えているかを分析し、戦略を立てる必要がある」と報告しました。
 14年11月に開催された2回目の会議では欧州労使協議制度(EWC)の枠組みを用いて、スイスポートへアプローチすることにより得た情報の報告と今後の取り組みが出されました。今回はスイスポートの全容を紹介し、次号は進出している各国におけるITF加盟組合の取り組みを紹介します。
 スイスポートの企業規模を示すデーターと地域別分布、現在5万5千名を擁するグローバルなグランドハンドリングに拡大した背景にあるジョイントベンチャーとの買収の経過は【表】をご参照ください。 スイスポートが行っている業務はグランドハンドリング(ステーションのマネジメント及び管理・旅客サービス・航空機のサービス及びランプでのハンドリング)、貨物、給油、保安、航空機メンテナンス等空港における地上業務全般に及んでいます。

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