phoenix298号 PDF298


■主な記事から■
▼バラ色目論む投資・利益・財務。全日空の抱える課題を斬新に考察
▼コロコロ変わる勤務、1時間休憩には程遠い実態。いつになったら良くなるの
▼JAL、パイロット流失で緊急事態。地上勤務削減しパイロットを確保
▼御巣鷹山事故から30年。日増しに大きくなる「労働環境改善を」の声
▼安倍政権NO!戦争法・労働法制改悪反対


航空連グラハン連は7月7・8日、東京都大田区にて「2015グラハンセミナー」を開催しました。JAL系・ANA系・成田空港のグランドハンドリングに関する3つの報告と、「ブラック企業問題について」の講演が行われました。全国から29名が参加しました。

 開催にあたり佐々木航空連副議長(グラハン担当)は、「2月の航空セミナーで、この10年間でグラハンの労働条件がどのように変化したかを報告したが、さらに掘り下げ多くのグラハン労働者と共有することが急務と考え開催に至った」と述べ、「自社の状況という狭い範囲にとらわれることなく、全国的なグラハンの状況を立体的に見ることで経営側の弱点や課題をつかんでもらい、今後の運動や要求獲得につなげていきたい。また、組合員の学習の場にしていきたい」とあいさつしました。
グランドハンドリングの現状と課題については、3つの基調報告が行われました。

 島田航空連幹事はまず「JAL系グラハンの現状と課題」について報告。労働条件が航空連加盟労組のがんばりと産別との相乗効果によって築きあげられてきたこと、そしてその労働条件が、労使協調路線に方針転換した労組をてこに引き下げられてきたことを歴史的に解明しました。そのうえでJALグループグラハンが抱える問題として、引き下げられた賃金問題や小型化で腰痛などの健康被害が広がっている点などについて、改善に向けた取り組みの必要性を強調しました。経営側にとっては、首都圏発着枠拡大と2020年の東京オリンピックに向けた人材材確保が喫緊の課題になっていることを具体的に説明し、「安全運航にグラハン労働者は欠かせない。労働条件は安全を支える基盤。誇りと責任をもって主張しよう」と訴えました。
 「ANA系グラハンの現状と課題」では、2月の航空セミナーでのおさらいをしたうえで、全日空の1空港1運営会社方針の下で、従来のグラハンの姿からは大きく変化したことが語られました。2010年まで羽田空港のANAグラハンを担っていたIAUは、1空港1運営会社化方針の下でANAASに再編統合されました。2006年以降、IAU労働者は3度の賃金制度変更でどのように引き下げられてきたかを、具体例を説明しました。

 「成田空港のグランドハンドリングの現状」を報告したのはJAS新労組の村上さん。アライアンスの枠組みはあってもコスト意識のなかでグラハンが選択される実態があることを紹介し、業務の受託には「安全」「オンタイムパフォーマンス」が重視されると強調しました。また、業務受託に入札制度が広がるなかで、不当な賃金引き下げにならないよう最低賃金制の確立や、不当な契約引き下げを防止するために法的な規制が必要と強調しました。未組織労働者の組織化が課題と語りました。

 「ブラック企業問題について」と題して講演した竹村和也弁護士(ブラック企業被害対策弁護団副事務局長)は、「ユニクロ」や「わたみ」などの事例を基に、ブラック企業を生み出した背景や対処方法について述べ、「労働組合のないところに違法行為が行われている」と強調しました。

 セミナー参加者からは、「航空会社との契約解除によって業績が悪化し、有期社員の雇止をしている。こうした動きが若者には将来展望がないと映り、退職を招いている」「要求を出すことが引き下げの歯止めになる。賃金の引き上げは安全面からも必要。労基法を改正させることで底上げになる」「新入社員が入ってこないなかでは、組織的にもきつい。仕事もきつく40代、50代では体力的にもきつくなっている」「明らかにバードストライクと思える形跡があったので報告したら、大きな虫が当たったんだろうと言われた。着地では整備士もいない。フライトを遅らすことができなかったのではないか」「複数の組合があるなかでは、対立ではなく労働者の利益につながる取り組みが必要」などの意見が出されました。
 セミナーは2日間の討論を踏まえ、以下の4点を確認し閉会しました。@要求の前進がないからとあきらめない。要求を出すことが引き下げの歯止めになる。A労基法を改正させ法律面から縛りを設ける。政治に無関心であってはならない。B入札が広がる中では、労働条件をまもるための政策課題に取り組む。C組織拡大を旺盛に進めるために、地域にあった形でこうしたセミナーや勉強を開催する。

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 好業績を続けるJALとANA。1996年以降相次ぎ設立された新興航空会社はANA傘下に入り、スカイマークは2015年1月に民事再生を申請。LCCはピーチを除けば青息吐息状態です。一方、政府は2020年までに首都圏発着枠を7・9万回増に。加えて2020年には東京オリンピック、パラリンピックが開催されます。発着枠や航空需要の拡大が予想されるなか、航空各社が抱える課題を3回にわたり考察します。1回目は全日空です。

 新成長戦略「日本再興戦略の改訂2014」では、2020年に開催されるオリンピック、パラリンピック東京大会を目処として、首都圏空港の発着枠を約7・9万回増枠するとしています。発着枠が外航と本邦が半々、JALとANAが半々、近距離国際線と長距離が半々とすれば、両グループとも約250名の乗員が必要となります。
 ANAの経営戦略は、2016年度までJAL経営を縛っている「8・10ペーパー」を念頭に、それまでに国際線を含めJALを凌駕するエアラインとなるため投資し、かつ利益性と財務体質の改善を目論む「バラ色」を前提としています。5月16日の週刊東洋経済でANAホールディングス片野坂新社長は、「不測の事態に備え年商2カ月分以上の手元資金確保は抜かりなく行う」と、過大な投資やイベントリスイクへの懸念に答えています。発注済の航空機合計85機については、毎年1800億円を投資し一時的にキャッシュフローがマイナスになることを認めています。現在34%の自己資本率を早急に40%まで上げ、イベントリスクに耐える体力が必要だとの市場関係者からの指摘に対しては、10年後に備え毎年400億円を積み上げ自己資本を1・2兆円にとの皮算用で答えています。

 JAL破綻の一因に国際線のイベントリスクがありました。JJ統合直後の2003年度、JALはイラク戦争、テロ事件続発、SARS流行に加え鳥インフルエンザもあり886億円の純損失を出しました。2009年の新型インフルエンザでは、国際線収入は前年比4割減という凄まじいものでした。国際線比率を高めるANAは、かつてのJALと同じイベントリスクに常にさらされていきます。
 6月30日の日経新聞は、ANAの2025年度までの長期戦略構想で国際線の売上高を現在の1・5倍、2兆5000億円に引き上るのは野心的な目標などではなく、世界で埋没しないための最低限のハードルと報じました。中国南方航空やシンガポール航空など売上高1兆円台の航空会社がひしめき、ある程度の規模がなければ金融危機などのイベントリスクが生じた場合耐えられないという解説で、ユナイテッド航空やルフトハンザ航空など欧米大手の売上高は3兆円を超えているとしています。

 収入面のイベントリスクの背景にあるのが投資面での資金問題です。すでに、新たな増資による株式価値毀損に対する警戒感が広まり、ANAは利益によるキャッシュで機材費用を賄う以外の資金調達は難しくなってきています。批判を承知でスカイマーク「支援」にも向かっています。2017年度から出資や新規路線開設の制限が解けるJALに、スカイマークを奪われる懸念からでしょう。

 そのJALは今、深刻な問題を抱えています。

(つづく)

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「いつになったらスケジュールは安定するの」

 国内の客室乗務員の乗務スケジュールがコロコロ変わることが問題になって久しいです。本誌でも何度がお伝えしてきました。この夏闘で日航キャビンクルーユニオン(CCU)は、「労働基準法を守ること」として、@勤務は1ヵ月単位の変形労働時間制に則り、オリジナルのスケジュールのH(公休)は変えないこと、Aオリジナルスケジュールを変更する場合は、労基法に則り、時間外手当を支払うこと、B合計1時間の休憩がとれない国際線日帰りパターンは、片道デットヘッド(仕事はせず移動のみ)もしくはステイ(宿泊)パターンとすることを要求しました。
 CCUとの交渉で日航経営は、「固定Hの拡大トライアルは引き続き継続して運用する中で、色々課題を認識しているから、今後更なるスケジュールの安定化のために、どういう施策ができるのか検討しているところ。まだいつという明示はできないが、従来の考え方に捉われない、幅広い考え方も工夫していく必要がある」と応じました。
 CCUによると、休憩時間については会社もアンケート調査を実施しているようですが、結果は明らかにされていません。「特にひどい勤務パターンは成田―グアム線で、5〜10分座れるかどうかで、1時間の休憩には程遠い実態」と訴えます。

 客乗連によると、「程度の差はあれ勤務がコロコロ変わるのは日本の航空会社の共通の問題。本来、スタンバイ要員を増やす事で改善できる問題です」と話します。

 スケジュールの安定は、家庭や社会生活を営む上で大事な要素です。

 労基法に抵触することを認識しながら「協力をお願いします」では許されません。

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 日本におけるパイロット不足は今年始まったことではありません。2008年3月に日本エアコミューターで20数便、スカイマークでは6月から9月までの間に計633便が乗員不足で欠航しました。LCCの運航が始まると、2014年にはピーチで5月からの半年余りで2128便、バニラで6月に154便、ジェットスタージャパンで101便、春秋航空で592がパイロット不足で欠航しました。パイロット不足が明らかにもかかわらず抜本的な対策が取られていなかったことは航空会社のみならず、この状況を放置してきた国交省も問われます。

 パイロット不足による欠航便が発生した会社を見ると、機材数や乗員数が中規模以下の場合となっています。パイロットの勤務実態が大変厳しく、病欠者など不測の事態が起きるとカバーするパイロットが確保できないことが原因です。JALやANAなど規模の大きい会社は不測の事態にも対応できる体制があり、たとえパイロットが不足したとしても別機種による代替運航が可能なため、表面化することはありませんでした。
 しかし現在、JALでは深刻なパイロット不足が続いています。経営破綻後、JALでは1000人近いパイロットが退職勧奨を受け、それでも余剰として81人を整理解雇しました。経営再建を果たしたのちも、グループ会社を含めると5年間で250人ものパイロットが自主退職し、パイロットの勤務は厳しいものになりました。航空法が定めた飛行時間制限ぎりぎりまで勤務する状態となったため、安全基準で制限されるパイロットが表れてきています。
 JALの運航本部は6月、欠航便の発生を防ぐため、パイロットが行っている地上業務を削減する方向で見直し、乗務できるパイロットの数を確保する体制を発表しました。これまでも、繁忙期の年休調整などはありましたが、今回の事態は大変深刻であると見なければなりません。過去、他社で起こったパイロット不足による大量欠航を教訓とすることなく放置してきた、JAL経営の大失策です。

行政訴訟で会社が最高裁に上告

 6月17日、東京高裁は東京地裁に続き、組合全面勝訴判決を下しました。労働組合の争議権投票に対するJAL管財人の介入は、不当労働行為と明確に断罪されました。

 判決は、憲法28条のもとにおいては、たとえ会社更生下にあっても労働組合の権利は守られなくてはならず、使用者に求められていることは、労働組合との何らかの妥協を図ることであり、そのような方法によることなく一方的に労働組合の運営に介入することは不当労働行為であると、明確に判断しました。しかしJALは判決を不服として7月1日、最高裁に上告しました(上告理由は現時点では不明)。

 整理解雇事件は最高裁の不当決定で法的には決着をみていますが、不当労働行為についての判断は示されていません。原告団と労働組合はJALに、被解雇者の一日も早い職場復帰を求めています。

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 日本航空は、1985年8月12日の御巣鷹山事故(日航123便事故)から30年、2005年の事業改善命令から10年を迎えます。あらためて日本航空が御巣鷹山事故後に打ち出した経営方針を確認すると、このように書かれています。

 「新体制発足にあたって」(最高経営会議通知第1号)によると、「旅客・貨物を安全に輸送することが本業であり…『航空機の安全運転が原点』」とし、「1.絶対安全の確立」、「2.効率的組織と公正明朗なる人事行政の確立」「3.労使関係の安定化」「4.国際競争力強化の確立」「5.御遺族及び御被災者補償の万全」。

 近村航空連議長は今の日航経営について、「当時の日航の最高経営会議が打ち出した経営方針は、絶対安全の確立に始まり、人事方針、労使関係が安全運航にとって必要なこととして打ち出した。しかし日航経営は2010年12月末に165名を解雇し、再建の過程で労働組合を恫喝したことが違法な不当労働行為として地裁・高裁で断罪された。これは分裂労務政策への反省もなければ、労働組合敵視とする旧態依然とした体質を引きずっている証左」と厳しく指摘します。

 いまJALは、パイロットの流出が止まらず、今後の事業計画に重大な影響を及ぼしかねない事態に直面しています。6月29日に運航企画部長名で「機長について、資格維持に関わらない教育・訓練(フィロソフィ、ブランドセミナー……等)、および会議体、地上業務の見直し、削減を行う」「現場とのコミュケーションを密にしながら柔軟に乗員計画を策定…JALで働き続けたいと思えるような職場を目指し、あらゆる施策に取り組んでいく」とする文書を発信しました。JALの窮状を吐露したものでした。

 羽田空港の整備現場では、6月後半から7月初めにかけて2件の航空機損傷事故が発生しました。

 過日、航空局は航空各社の代表を集め昨今の航空機関連の不具合事例を踏まえ注意喚起しました。事例の9割はJALグループだったようです。

 今、多くの職場で人員不足が問題になっています。「休憩時間がとれない」「年休がとれない」「勤務がコロコロ変わる」――

 現場からは、「安全運航を堅持」するために「労働環境改善を」との声は日増しに大きくなっています。御巣鷹山事故から30年、行き過ぎた利益至上主義を改め、現場の声に真摯に向き合うことが日航経営に求められます。

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 安倍政権が今国会で成立を目指す安全保障関連11法案と労働法制改悪。いずれの法案も今後の私たちの将来に重大な影響を及ぼします。
 労働法制改悪では、正社員ゼロ法案を言われる「派遣法改悪」、そして残業代ゼロ法案と言われる「労働時間法制改悪」があります。派遣法改悪について政府は、「派遣労働者の処遇改善につながる」としていますが、同一労働者の同一組織・事業所への派遣期間を原則3年とし、3年過ぎれば他部門へ異動するか辞めることになります。派遣料は所費税課税の対象にならないことから、正社員の派遣社員への置き換えが進む懸念があり、「正社員ゼロ法案」と言われるゆえんです。
 南部法律事務所の竹村弁護士は「高度プロフェッショナル制度1075万円としているが、塩崎厚労大臣は、日本経済研究センターの会員会社・社長朝食会で『小さく産んで大きく育てる』と、制度の狙いと本音を大臣があけすけに語っている」と話します。財界のための「労働法制改正」であり、企業の社会的責任を放棄し、労働者をモノとして扱う極めて問題のある改悪です。7月8日から参議院で審議が始まりましたが、安全保障法制とあわせ廃案に追い込みましょう。

 さて、安全保障関連11法案は、7月16日に衆議院で強行採決し参議院での審議が始まります。

 「存立危機事態」「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」など、抽象的な言葉や「平和」という名称を飾りたてていますが、本質はアメリカの世界戦略に付き従って、地球上のどこであろうと自衛隊を派遣するものであることが、この間の国会論戦で明らかになりました。どれもが重要な法案ですが、1とつの法案の審議時間は平均し10時間足らずです。
 安倍政権が強引な解釈による集団自衛権の行使容認について、憲法学者の多くは憲法違反と指摘しています。衆議院での強行採決に抗議する学者・研究者でつくる「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールに学者・研究者1万1218人が賛同しています。マスコミの世論調査によると、安倍内閣支持率は「支持」が30%台に急落し、「不支持」は過半数を超え、『朝日新聞』(7月20日付)では安保関連法案「賛成」29%、「反対」57%と不支持が支持を大幅に上回っています。戦争法廃案を求める若者のデモ行進も各地で取り組まれています。

 民意を無視し、独裁政治化した安倍政権の退陣を求める声も強まっています。

 航空連は、民間航空の軍事利用のリスクが高まる戦争法案に反対です。

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