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■主な記事から■
▼高まる「安全・健康・人的リスク」ー3人に1人がヒヤリハット経験
▼大統領指名候補争いで見えるアメリカの病巣
▼JAL解雇争議ー職場・社会・国会の3つの力で早期解決めざそう
▼外航連が大阪集会開催。賃金引上げがんばろう
▼航空安全会議、2016年総合安全要請、5月から関係省庁に要請
▼キャビンクルー委員会で英UNITEと交流


4月6と7日、ロンドンのITFハウスで開催されたキャビンクルー委員会に、航空連から萩原幹事・菊池顧問・岩田国際活動委員が参加しました。欧米をはじめ中東・香港・南米などから40名ほどが集まり、「キャビンの空気の質」「ICAO客室安全委員会」「カタール航空キャンペーン」「IAMのデルタ航空キャビンクルー組織化」「最低10時間の休養時間を法制化する取り組み(アメリカ)」などの、キャビンクルーの抱える問題について活発な論議が交わされました。JALの不当解雇問題や客室乗務員の雇用や勤務、評価システムなどについて、現状を簡潔にまとめた文書(カントリーレポート)を配布し、概要を口頭報告しました。

 客室空気の質についてはITFが数年来取り組み続けたことで、ICAOから2月に「教育、報告に関するガイドライン」が出される成果が出ています。主にエンジンブリードから客室内に取り込まれる空気に、場合によって汚染物質が混入する恐れがあること、本人も気づかないうちに汚染物質を吸入することでパイロットが意識を失いかけた事例、突然死した客室乗務員を調査したところ体内から通常の2倍以上の汚染物質が見つかり訴訟になっているケースなどが紹介されました。航空連は、日本での重大事例の報告がないことから「クルーの意識を高める必要性」を強調し、「航空会社に教育・訓練を義務づけるようICAOに働きかけをしてほしい」と求めました。「空気の質の悪化を感知するセンサーの開発」や「医学的研究(ワシントン大学等)」、「予防の観点からの血液検査の必要性」などについて幅広い意見が出されました。 安全問題では、幼児用のシートベルトやチャイルドシート装備、客室乗務員の最小編成数(最低ドア数は必要)、ライセンス制度の有効性などの意見が出されました。 カタール航空からは、ILOから女性差別是正の勧告が出され、妊娠・出産休暇はできたものの女性への差別的扱いは変わっておらず、情報提供などの支援の呼びかけがありました。

 2万1千名のデルタ航空客室乗務員をIAM(全米機械工組合)に組織化する取り組みは現在進行中です。参加者からは「積極的に協力したい」「ウェブサイト、メディアを利用してはどうか」などの意見が出されました。
 FAA(米国連邦航空局)に、客室乗務員の最低10時間の休養規定を設けさせる取り組みでは、上院・下院への働きかけなどの進捗状況が報告されました。

 FOCやICAOの航空運送規制委員会での議論についても各国の現状が報告され、世界の航空労働者が一致して国際舞台で闘う必要があると強調されました。

 最後に、航空連からJAL不当解雇問題の報告をしました。昨年11月に出されたILO勧告、「会社と当該労働組合との意義ある対話を維持することの重要性を今一度、強調する」との内容を紹介し、会社と政府はこの要請に応える責務があることを報告し支援を訴えました。

 各国からの参加者は、「現場で起こっていることはそこで働く者が一番よくわかっている。だからこそ、改善するためには人任せにせず一人一人が問題意識を持って動く必要がある」とのスタンスで、積極的に議論に参加していました。国や会社は違っても客室乗務員の責務は同じです。職場の問題にも共通点が多く、支援やアドバイスなどの交流が行われ、世界中に仲間がいることに力強さを感じました。

 ITFは、航空・海運・鉄道などに従事する148カ国692組合、480万人が加盟する国際組織です。グランドスタッフや整備などの会議も定期的に開催されています。来年3月にはITF民間航空部会総会が開催される予定となっています。航空の各職種を組織している航空連の役割の発揮が求められています。

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3人に1人がヒヤリハットを経験し、半数以上が「安全が低下した」と感じ、7割の関心事のトップは「健康不安」――春闘統一アンケート(2659枚)でこんな実態が浮き彫りになりました。各社の好調な業績とは裏腹に、職場の安全や健康は蝕まれ、人的リスクは一段と高まっています。 業務実態については、「忙しくなった」49・1%、「相変わらず忙しい」17・8%。3分の2が忙しさを訴えています。関心事について3つ選択してもらったところ、上位は「健康不安」68%、「労働条件切り下げ不安」44・6%、「技術力・スキル低下」35・6%。「健康不安」は昨年に比べ13ポイントアップしました。安全については「向上している」6・2%に対し、「低下している」51・9%。半数以上が安全性低下を感じています。新項目のヒヤリハットでは「経験した」は34・8%。3人に1人がヒヤリハットを経験している実態が浮き彫りになりました。

 アンケート結果を裏付ける出来事も相次いでします。 病気や健康状態を理由にしたパイロットの乗務中断者が近年増加傾向にあります。航空連の調べでは、全日空は07年をピークに減少傾向でしたが11年から増加傾向に転じ、14年には約70名に上ります。日本航空では2010年の経営破綻の際に120名を超える中断者がいました。多くが退職したことから10年12月には20名を下回っていましたが、14年には40名を超えています。片岡航空連副議長は、「稼働強化の勤務では、今後は両社ともに中断者はさらに増える状況にある」と話します。
 全日空が発表した2020年までの中期計画では、航空機を258機から300機に増やします。そのためにはパイロット約250名増が必要と試算しています。安定的な採用とあわせ、中断者増加に歯止めをかける施策を打ちださなければ計画に影響を与えかねません。全日空では今年に入り、病気で休んだパイロットの交代要員がいないため定期便を運休する事例も報告されています。
 客乗連の調査によると、客室乗務員の乗務時間は月間平均でJAL・ANAともに約70時間となっています。これには休業者も含まれているため、実態的な乗務時間はもっと多くなります。月間乗務時間が90時間を超える人も珍しくありません。

 乗務時間は飛行機が駐機場を離れてから着地の駐機場で停止までの時間ですから、総就業時間は離着回数にもよりますが乗務時間の1・5倍から2倍になります。これに早朝深夜の勤務や時差が加わります。
 こうした長い乗務時間を可能にしている一つに国内国際混合乗務があります。より効率的に稼働率を上げられる手法として混合乗務が頻繁に行われるようになりました。
 前田副議長(客乗担当)は「稼働強化策はCAの疲労の蓄積を高めています。加えて労働に見合わない賃金も相まって大量退職につながっています。ANAの平均勤続年数は2013年3月で6・5年、JALは10・2年でした。
 JALの場合、2012年の採用再開以降のCAが全体の37%を占め、2016年度の国際線に至っては過半数を超えます。こうした若い世代を支える経験者が圧倒的に足りません。
 疲労が回復できる勤務と休日、乗務中の休憩時間の確保、保安要員としてふさわしい労働条件と賃金などの改善が急務です。大量退職、大量採用を繰り返すことは、安全を向上させるうえで良い状態とは言えない」と話します。

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 11月のアメリカ大統領選挙に向けた指名候補争いが連日新聞をにぎわしています。共和党は過激な発言を連発するトランプ氏が指名争いを有利に進めているようです。民主党の指名争いは、ヒラリー・クリントン前国務長官と「民主的社会主義者」を標榜するバーニー・サンダース上院議員の激しい対決が続いています。サンダース氏が支持される背景には、格差と貧困を拡大するアメリカの姿があります。同氏は「金融資本や金持ちが権力を握ってやりたい放題やっている。もっと公平な社会をつくろう」「世の中を変えるのは自分自身、我々一人一人だ」と主張します。
 米国では、ウォール街(金融業界)の政治献金で左右される政治に不満が高まっています。「富裕層や大企業が買収する政治にうんざり」「民主主義を取り戻そう」「米国の問題は、献金で政治がゆがめられ、国民の意見が届かなくなっている」――そんな声がサンダース氏を支えているようです。
 サンダース氏は言います。「ルーズベルト(米第32代大統領)が提案した貧困対策、労働者の団体交渉権保障など地位向上、社会保障政策は社会主義的と称された。しかしこうした事業は米国を形作るものとなり、中産階級の基礎となった」「医療はすべての人の権利……公教育はこの国のすべの人、その能力と資格、希望のある人に、公立大学に無償で通う権利を認めることだ」

 アメリカでは貧困と格差を正すうねりが広がっています。州毎に定められている最低賃金を、時給15ドルに引き上げる動きが広がっています。4月14日には、各国の労働者らが最低賃金の引き上げと労組結成・権利の向上を求め、過去最大規模で「ファストフード労働者世界同時アクション」が実施されました。

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「この春闘での私の一番の要求は解雇撤回です。きついパターンや低い賃金、何とかしたいと思いますが、まず解雇撤回です!」
 3月7日からの本社前の座り込みに、フライト後の休みを全部使って参加したCCU組合員が後日こんな感想を送ってくれました。 感想は更に続きます。

 「天王洲アイルまで小一時間はかかりますし、時差で夜中から起きている日もありましたが、一致団結して問題を解決しようとする人たちが集まっているこの雰囲気。疲れるどころかストレス解消になりました。私は当該労組の組合員ですから活動するのは当然ですが、社外の様々な方が私たちの問題を自分のことのように捉えて活動して下さっていることに感動し、本当に頭が下がる思いです。こういう一つ一つの活動の積み重ねが会社を追い込み、解決に向かわせるのだと思います」
大勢の支援者の熱い思いに 現役の人たちは破たん後に大幅に下げられた賃金と労働条件のなか、必死に働いています。休日は疲労を回復し次の乗務に備えることでいっぱいなはずです。少ない休日に取り組みに参加することの大変さは容易に想像できます。しかし、取り組みに参加し、大勢の支援者の熱い思いを目の当たりにして、空の上とは違う感動と感謝の気持ちを持ってくれたことは争議団にとっても嬉しいことです。
 全国的に広がる支援の輪 不当に解雇されて6年目を迎えました。昨年2月に最高裁の不当決定が出され法廷での闘いが区切りをつけられたなかでも、解雇の理不尽さと、解雇自由の社会への道を許してはいけないとの思いで、惜しまずに続けられる支援が争議団の大きな支えになっています。
 全国的にも支援の輪は広がっています。年明け早々に「JAL闘争を支える北海道の会」が立ち上がり、3月には釧路で「支える会」の準備会が立ち上がり、発足も間近となっています。「支える会」や「支援共闘」は、争議団が把握しているだけでも27団体を数えます。新潟のように、別々に行動していた2つの団体が一点共闘で争議を支援する動きもありました。

 各地の支援団体は、独自に様々な行動も進めています。2月29日、兵庫と大阪では、東京の本社包囲行動に呼応し大阪行動を行いました。新潟・秋田では、それぞれの地域で労働局や航空局事務所への取り組みを行っています。名古屋では「愛知の会」が、毎年の「1の日宣伝行動」の他に3カ月に一度大きな取り組みを企画しています。今年はひな祭りの日に、ILO勧告の学習会を交えた取り組みを行いました。

一日でも早い争議解決へ
 争議団は、こうした全国の支援者の力強い後押しを受けて、争議解決に向け全力を注いでいます。
 今春闘で日航内各組合は、昨年11月に出された「意義ある交渉を行え」とするILO第3次勧告を生かすべく会社に迫りましたが、日本航空は自主解決を決断できないでいます。争議団は国会議員の超党派の取り組みにも期待し、職場・社会・国会の3つの力を基礎に、一日でも早い争議解決をめざしています。

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 大幅賃上げ、労働条件改善を求め「16春闘外航大阪集会」が4月1日、大阪市内で開催されました。開会あいさつにたった赤坂外航事務局長は「今年も追い風春闘となっており、内航では2年連続ベースアップ回答を引き出しています。外航としても、ベースアップや一時金、雇用を守る取り組みを強化しましょう。また、JALの不当解雇撤回、エミレーツ航空の不当解雇撤回を目指し頑張ろう」と力強く挨拶しました。集会では、中川航空連政策委員を講師に「外航各社の経営分析」と題して学習会が行われました。学習会後には各労組から春闘要求や労使交渉の現状が報告されました。不当解雇撤回を闘っているSNW大阪支部エミレーツ分会からは、不当解雇の経緯と裁判の状況が話され更なる支援を訴えました。 外航各労組では日本支社との交渉が行われていますが、ノースウエスト航空労組(現デルタ航空)では14・5%の賃金引上げを獲得しています。フェデックス労組では春闘交渉と並行して組合員の拡大も進めています。

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 航空安全推進連絡会議(航空安全会議)は3月23日の臨時総会で承認された総合安全要請を行います。5月のゴールデンウイーク明けから行うよう現在、交渉日程について関係省庁との最終調整が行われています。交渉先は国土交通省航空局、・東京航空局・東京国際空港長・運輸安全委員会・気象庁・厚生労働省などです。
 東京と並行して、全国7支部(札幌・成田・名古屋・大阪・福岡・鹿児島・那覇)においても地方航空局や各空港長等と交渉を行う予定で日程調整に入っています。

 本部の交渉日程については以下の予定です。

5月11日午前 厚生労働省(調整中)

5月18日午前 羽田空港長(決定)

5月25日午前 気象庁(決定)

6月8日午前 東京航空局(決定)

6月下旬の2日間 航空局(調整中)

 未定 運輸安全委員会

 例年であれば、本省航空局との交渉は5月下旬ないし6月の上旬に行われていましたが、今期は諸事情により1カ月ほど遅れる見通しです。そのため7月7日(予定)の安全集会と競合することになりそうですが、航空安全会議は「7支部と力を合わせて有意義な交渉にして行きたい」と語っています。

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 航空連は4月にITF本部(国際運輸労連・ロンドン)で開催された「キャビンクルー委員会」に参加しました。日本の航空情勢の紹介と現状を、「キャビンクルーの雇用状況」「労働時間、疲労、機内の休養、及び休憩時間」「高い離職率」「査定システム」「雇用における性差別」「キャビンクルーのライセンス」「外航の日本人キャビンクルーの問題」「キャビンクルー及びパイロットの不当解雇に関する争議のアップデート」にまとめ加盟労組に伝えました。

 さらには口頭で、@外航における「日本人非正規社員」と「本国クルー及び日本人正社員」との間に際立った格差がある、Aアリタリアなどでは「機内通訳」として乗務させ、編成内メンバーとして機内サービスをさせているにも係わらず救難訓練を実施していない、Bほとんどの日本の航空会社では上司の主観が入り込む査定に基づいて昇給・昇格がなされ、クルーの不満やストレスにつながっている、C日本では男性に比べ女性の賃金が低く「性による職業差別」と呼ばれている、D客室乗務員は資格を持った保安要員であることを証明するライセンスシステムを求めて当局に働きかけている、E日本航空の解雇事件は会社主張を認める不当な形で裁判闘争が終結したが、ILOから職場復帰につながる「意義ある対話」を求めるとの勧告が出されるなど争議は続いている、ことを報告し引き続き支援を要請しました。
 会議の場では、英国の最大労組であるUNITE(組合員約130万人)との交流も進みました。欧州では「EU労働時間指令」という制度があります。航空連は、これが具体的にどのように職場実態や労働環境に反映されているのかを調査し、日本での職場改善につなげることをめざしています。UNITEに調査協力を依頼しており、日程調整に入っています。

 9月にはITF本部でMROと呼ばれる整備に関する会議が開催される予定です。航空連は日本の整備職の職場実態を海外に伝え、あわせて海外の整備職の労働条件や職場実態を持ち帰り職場改善につなげたいと考えています。

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