phoenix309号 PDF309


■主な記事から■
▼ヘリに8Kカメラ搭載。進化する防災活動
▼グランドハンドリング 後を絶たない退職減らない事故・トラブル
▼JAL解雇争議団がJALプラザ前で座り込み。株主総会では7名が発言
▼オーストリア航空、日本路線撤退。団体交渉で頑張る
▼7月15日(金)、倉町労災裁判判決
▼キャリア63年、90歳まで乗務したボブ逝く
▼7月は各地で安全集会が開催されます

勤務改善・人員確保は喫緊の課題

鮮明になった年間一時金 ANA・JAL格差

 日本航空と全日空の好調な決算を背景に闘われた16夏闘。一時金はJALグループ2・5ヵ月、ANAは年間6カ月+α(利益目標達成時)。JALグループでは昨夏を0・2ヵ月上回るものの、企業業績が反映されない一時金、鮮明になったANA格差、改善されない過重労働、減らない不安全事象に経営への不満は高まっています。

 全日空の15年度営業収入は過去最高の1兆7911億円、営業利益は1364億円となりました。羽田空港の国際線発着拡大も収入を押し上げました。日本航空は1兆3366億円の営業収入を上げ、営業利益は過去最高の2091億円。両社の16年度見通しは、全日空は売上高1兆8100億円・営業利益1450億円、日本航空は売上高1兆3430億円・営業利益2010億円となっています。内部留保は全日空が6995億円、日本航空は9772億円に積み増ししました。

 全日空は春闘で一時金年間6カ月+α(夏冬2カ月+期末2カ月+α)を回答。全日空乗組(ACA)は夏闘では副操縦士の機種移行や出向問題、経営監視を要求し、会社の考え方などの回答を踏まえ引き続き継続的に交渉を進めていきます。

 JALグループ各労組は春闘で示された2・5カ月の上積みを求めて交渉。再回答を引き出すには至りませんでしたが、一時金減額につながる「マイナス評価廃止」の回答は大きな成果です。ANA格差をしっかり経営に認識させる発言を引出したことは今後につながります。日航ユニオンでは、特定積立休暇制度や出張時のパーディアム減額問題(朝食サービス)で、運用の見直しで改善が図られます。運航整備の夜勤休憩時間問題では、整備体制の見直しによる改善の方向性が示されました。

 好調な決算に比して労働者の処遇改善が遅れていること、また疲労を緩和させる勤務改善など課題も残されています。

 CCUではマタハラ裁判以降、新たな産前地上勤務希望者に職域が拡大される成果が出ています。休日の固定化をめぐっては新たに勤務提案が示されました。勤務の暦日管理から時間管理とするもので、休憩の取れていない国際線日帰り乗務の翌日にも国際線乗務が可能となるなど更なる労働強化につながる危険性が高く、結果的には、実態としての年間休日数が削減できるものです。経営は11月導入を計画しています。引き続き改善に向け取り組んでいきます。

 JGSグループ各労組は老朽化した器材について、2016年度に123台の器材更新が明らかにされました。また、「みなさんに満足していただけるような労働条件向上に取り組んでいく」との基本姿勢を明らかにさせました。時短・休日増、グループ格差、再雇用(定年退職者)の職域拡大などで改善につながる前向きな発言を引き出しました。

 NAFCO労組は、中期達成金含め夏の一時金は2・5ヵ月+18万7500円の回答を引き出しました。また、外航では本国との調整もあることから、数組合が春闘の賃上げ交渉を継続しています。

 航空産業は首都圏発着の7・9万回増に加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックンが待ち構えています。全職種に広がる人員不足は、今後の事業計画を進めるにあたって航空経営にとっても喫緊の課題です。人員が確保できない状態で事業運営が続けば労働強化は避けられず、安全を脅かすリスクは高まらざるをえません。職場の安全を支えるのは現場労働者です。安全を支える基盤は労働条件をあることをきっちり主張し、引き続き労働条件改善をめざしていきましょう。

16夏闘 成果を確認し引き続き労働条件改善めざそう

309TOP


最新技術で進化する防災

ヘリに超高画質カメラ搭載  スーパーハイビジョン防災活用プロジェクト

 「8K」をご存知ですか。「キツい」「危険」「汚い」の3Kのさらに上を行く劣悪な職場環境……のことではありません。テレビの映像画質を表す用語のひとつで、ハイビジョンのさらに高画質なものをフルハイビジョン。その上を行く高画質の映像を4Kと呼んでいますが、さらに超高画質な映像が8Kであり、スーパーハイビジョンとも呼ばれています。現在は8Kカメラで撮影しても一般家庭にはその高画質に対応できるテレビが普及していないため、地上波テレビで目にすることはありません。しかし、その解像度を防災に活用しようとするプロジェクトが着々と進んでいます。地震とそれに伴う津波、火山の噴火、河川の氾濫などの大規模災害を想定し8Kカメラをヘリコプターに搭載。超高画質で日本全国の海岸線、河川、都市をくまなく撮影し、発災時には健全な状態の街との比較、発災後に再撮影した状況と比較することにより、被害の規模の把握やその後の防災に役立てることができる、というものです。

 8Kならではの超高画質を活かした特徴をご紹介します。画面の一部を抽出し、その部分を拡大する「切り出し」と呼ばれる技法があります。「切り出し」自体は珍しい技術ではありませんが、8K画像ではその解像度が突出しているため、街の雑観から特定の家屋や道路を「切り出し」して拡大しても映像が荒くならず、鮮明な画像で確認する事が出来ます。動画から静止画を取り出すと一般的には画質が落ちますが、8Kでは十分活用できる画像を取り出すことができます。

 このヘリ搭載のシステムには、さらに優れた装置が付加されています。これまでは撮影した場所(航空機の位置=カメラの位置)を特定・記録することは容易でしたが、映像に映っている場所の情報(市町村名)を連続的に特定・記録することは難しく、撮影後カメラマンが映像を見ながら地図を頼りに記録を残していました。連続的に流れていく街の映像で次々変化する市町村名を記録に残す事は困難を極めていました。

 このシステムではレーザー計測とGPSを駆使することにより、映像に映っている場所の市町村名が特定され、それが映像と共に連続的に記録されます。カメラを動かせば動く画像に合わせて記録される市町村名もリアルタイムに変化します。このシステムにより、映像と具体的な市町村名がリンクし、素早い防災活動が可能になりました。

 産業航空の現場はこのような防災活動の一翼も担っています。

309TOP


グランドハンドリング

後を絶たない退職減らない事故・トラブル

 蝕まれる職場の安全 

 航空機が到着してから出発までの間に、グランドハンドリング(地上支援業務)といわれる航空機の誘導や旅客の乗降用ボーディングブリッチ(ステップ)の着脱、貨物や手荷物の搭降載、機内清掃などが行われます。グランドハンドリングには安全で迅速な作業が求められ、この業務なしに航空機の運航は考えられません。ところが、航空会社からのコスト削減を強いられるなか、人員不足や事故トラブルが後を絶ちません。

 羽田空港で全日空のグランドハンドリングを行っているANAAS。2015年度は全日空の事業拡大(増便)に合わせ570名の大量採用を行いましたが、人員計画で定めた人員を通年通し確保することができず、年度末で71名の不足となりました。人員不足は現場にしわ寄せされました。

 ANAASでは年間有休取得目標を18日としていましたが、上期終了時点で取得は平均4・5日。航空機の機側作業を行う職場では平均2日でした。この職場には約500名が在籍していますが、全日空で新たに導入した新フライトオペレーションの教育が重なり、職場からは「有休取得は前年度より更に悪化する」との声が上がっています。こうした状況を反映してか、事故トラブル件数は前年を上回る64件(14年度59件)発生しました。

 ANAASが発表した中期計画(16―20)では、2020年には現行プラス500名増の人員計画です。しかし現行人員には全日空からの出向者約700名(20年までに全日空に復帰)も含まれていることから、2020年までに1200名規模の人員採用が必要になると試算されています。計画通りの採用がなければ更なる労働強化が懸念されます。

人員不足問われる経営責任

 JALのグランドハンドリングを行うJGSでは、JAL破綻後の再建計画の中で人員削減を強いられました。しかしその後も退職が後を絶たず、JGS東京労組によると、2011年〜2015年までの5年間で498名が退職し、採用は約141名にとどまっています。穴埋めは効率化と外注化でしのいでいますが、委託先では計画通りの出面が確保できず、午前6時からの出勤者が22時近くまで残って作業することも珍しくありません。そればかりか、委託先で人員が確保できないことから業務を内製化する事態も起きています。こうした労働強化は職場の安全にも影響を及ぼし、15年度の羽田空港での事故トラブルは大小合わせ99件に上りました。

 搭降載を担当するベテラン社員は「決められた休憩時間も確保されず、効率化一辺倒で出ずっぱりの作業になっている。夏に熱中症になる人がいるが、こんな環境では当たり前だ」と話します。

 機械化が困難で人手のかかる作業の多いグランドハンドリングの現場は、人員不足は即労働強化につながります。2020年のオリンピックに向け人員確保は経営の最優先課題になっていますが、人員確保ができなければ労働者の健康破壊につながり経営責任が問われることになります。労働条件を引き上げ安定的な人員確保が求められます。

309TOP


早期解決目指しJALプラザ前座り込み・国交省要請

ILO勧告に従い早期解決を

株主総会 7人が安全・解雇問題を質問

JAL不当解雇撤回闘争

 不当解雇撤回と職場復帰を求めているJAL不当解雇撤回争議団は6月1日から3日まで、東京有楽町のJALプラザ前で座り込み行動を行いました。初日は定例のJALプラザ前宣伝行動から始まり、支援者はJALに不当解雇の撤回と職場復帰を求める要請を訴えました。争議団はJALの安全運航には解雇されたベテランの乗務員が復帰することが必要であり、マタハラ事件の早期解決が明るい職場を作っていく重要なポイントと訴えました。

 この宣伝行動の後に座り込みが行われ、多くの支援者たちと争議団が参加しました。JALに解雇撤回とマタハラの根絶を求める横断幕や「大量採用するなら職場復帰させよ」とのプラカードを掲げながらの座り込み。その前をたくさんの人が行き交い、ビラを受け取り、話を聞きに来る通行人もいました。JALの現状に驚き、争議団の行動に理解を示してくれました。3日間の座り込み行動を通し、争議団の訴えを伝えることができました。この行動には述べ254人が参加しました。7月もJALプラザ前宣伝行動に引き続き、座り込みを計画しています。

 6月17日には丸一日かけて東京総行動が行われました。争議を抱えている8企業と2官公庁、最高裁を順に回り、それぞれの門前で宣伝と要請行動(21日実施)を行いました。国交省前では、JALの不当解雇撤回争議の解決を求めて140名が宣伝行動に参加。JALOBや現役の客室乗務員の姿も見られました。

 国交省前では、主催者挨拶に続き、国民支援共闘共同代表の金澤全労協議長とJAL中部共闘の坂本幹事が連帯の挨拶をしました。

 争議団からは乗員原告山口団長が訴えました。「現在JALは業務改善命令が出されてもおかしくないほど安全が脅かされている状況にある」「乗員の職場アンケートでは『辞めたい』『きつい』『暗い』の声が多く、止まらない流出の原因となっている」など、安全運航を支えている職場の実態を告発しました。整理解雇問題では、2012年4月の衆議院国土交通委員会で前田国交大臣(当時)が「労使で円満に解決するよう見守っていきたいし、指導もしていきたい」と答弁したことに触れ、「いまだに真摯に交渉しないJALを放置し、解雇問題を解決しようしないのは監督官庁として無責任と訴えました。国交省は2017年3月まで、安全運航を大前提にJALの適切かつ確実な再建を監視し指導助言を行うことになっています。国交省の責任は重大です。

 6月22日にはJALの株主総会が開かれた千葉県JR舞浜駅前での宣伝行動が取り組まれ、株主総会に向かう株主らに争議解決を訴えました。株主総会では7人の株主から安全運航や争議解決を求める発言がありました。

 JAL争議に関し、ILO勧告が3度にわたり出されている現在、争議団は、勧告に従い解雇問題を早期に解決するよう、日本政府とJALに対して粘り強く働きかけをしていきます。

309TOP


オーストリア航空、日本路線撤退

日本人全社員に退職通告 SNW、団体交渉で頑張る

 オーストリアといえば音楽の都ウイーンです。ウイーン国立歌劇場、シェーンブルン宮殿が有名です。日本人にも「行きたい」願望の強い国です。ウイーンに直接行くには何といってもオーストリア航空です。ツアーではかなり安く参加できると人気がありました。そのオーストリア航空が突然!「9月4日成田発をもって日本路線を運航停止し、9月末で日本支社を閉鎖する」と発表がありました。

 オーストリア航空はほとんどの社員がスカイネットワーク(SNW)の組合員です。これまでもオーストリア航空は何回も日本路線が赤字という名目で希望退職や解雇をちらつかせたリストラが会社から告げられてきました。しかし、日本人社員のほとんどが組合員であり職場の団結力も強く、「日本で正社員を解雇することは法律上困難であること」と主張して団体交渉でいくつものリストラをはね返してきました。

 しかし、今回は「日本路線からの全面撤退」です。会社は強気で日本支社の閉鎖、日本人社員全員の退職を通告してきました。希望退職のパッケージ(退職金の上積み等)もこれまでのリストラと比べると非常に低い水準しか提示してきません。オーストリア航空分会の組合員は「この内容ではとても納得できない」と直ちに会社に団体交渉を申し入れました。これまで3回の団体交渉が開催され粘り強く交渉を行いました。熱意を持った組合員の切実な要求に対して会社は上積みを回答せざるを得ません。

 外国航空会社の路線撤退は、そこで働く日本人労働者の雇用を脅かします。これまでも多くの外国航空会社が日本支社を撤収しそこで働く社員は苦しい選択を迫られてきました。小さな会社でも、職場にしっかりした労働組合があれば、突然のリストラにもしっかり対応できます。

309TOP


JFU倉町さん労災認定裁判のお知らせ

 〈判決〉7月15日 13時10分 東京地裁527号法廷

 航空機の緊急脱出訓練中の怪我で、労災認定の期間を争った裁判。倉町さんは、治療とリハビリに取り組み航空身体検査に合格するまでに回復しました。業務中の怪我には、安心して治療に専念できるための補償は当たり前です。裁判の前に怪我は労災認定されるも、他社と比べ異様に短い期間でした。そして職種変更手続きを会社の都合で約2年間放置され休職を理由に整理解雇されており、改めて整理解雇の有効性が問われます。

309TOP

●安全会議だより(90)

沖縄支部

混雑緩和期待される第2滑走路建設 安全な空港を目指し施設改善など要請

 日本の南西に位置する沖縄県はリゾート観光地としての印象が強いでしょう。周りを綺麗な海に囲まれた暖かい気候に、近年は国内外問わず、観光で訪れる旅行客も増加傾向にあります。しかし周囲を海で囲まれているため、他の地域との陸上輸送に頼れないという特徴もあります。その意味でも、沖縄県における空港は産業と生活を支える大切な施設なのです。

 そんな那覇空港の現状は便の増加に加え、自衛隊機の利用や周辺に存在する米軍飛行場などの関係で空の交通は混雑しており、時間帯によっては慢性的な遅延が起きています。それらからくる潜在的な不安全要素の増加と様々な問題が溢れております。

 それらの解決のために現在、第二滑走路の工事が着々と進行しています。予定通り工事が進めば、東京オリンピック開催の少し前に新滑走路の共用開始となります。ターミナルから遠目に見える工事は徐々に形を成し、期待も膨らみますが、私たちが気になるのはその内容です。「運用はどのようにするのか」「航空無線施設は」「誘導路の名称は」「安全策はしっかり講じているか」など考えればきりがありません。

 安全推進連絡会議としてもユーザー側の意見を取り入れて頂けるよう、今期も各部門に対して要請書を提出し、より良い空港となるよう行動しています。今期の要請では、誘導路名称の見直しに関して前向きな回答がありました。まだまだ多くのが題点もありますが、改善に向けた変化を少しずつ感じることもできます。立派な新滑走路を建設中ですので、その内容や取り扱いといったソフト面でも立派なもの作って頂きたいと思っています。

309TOP

ITFニュース

ボブ逝く 

90歳まで現役で乗務 米客乗の労働条件向上に貢献 プロフェッショナルに定年はない

 航空連と連帯しているアメリカの最大労組、IAM(航空宇宙産業労働組合)からニュースが届きました。アメリカの客室乗務員にとって伝説的な人物がこのほど亡くなられたという内容です。

 その人はロバート・リアドンさん。尊敬と親しみを込めて「ボブ」の愛称で呼ばれてきました。

 プロフィールを見て驚きました。1942年生まれで、1943年から1946年までは軍曹。ノルマンディー上陸作戦に従軍した経歴を持っています。

 退役後はノースウェスト航空の客室乗務員として乗務し、デルタとの合併を経て、デルタ航空で90歳まで現役で乗務を続けました。キャリアは62年8カ月、飛行時間は5万時間あまりに及びギネスブックにも掲載されています。今年の6月3日、92歳の誕生日が祝われた27日後に亡くなりました。大勢の方に見守られた葬儀の様子とその偉業は、ノースウェスト航空の客室本部があったミネアポリスの地元紙にも報道され、レジェンドと讃えらました。

 ボブはAFA(全米客室乗務員組合)の前身にあたる労働組合の委員長として、アメリカの客室乗務員の労働条件の維持向上にも尽力してきました。アメリカの客室乗務員には、いわゆる「定年」はありません。ボブもそうした労働環境の確立に大きな影響を及ぼしたと思われます。IAMのニュースには、ともに乗務した客室乗務員のコメントが多数掲載されています。ほとんどすべての人が「ボブからプロフェッショナルというものを学んだ」と述べています。

 ボブにとって60歳代、70歳代は、引退には早すぎる「働き盛り」なのではないでしょうか。私たちが客室乗務員のライセンス化に加え、定年延長を求めて取り組むとき、ボブの偉業が励みになることは間違いありません。

309TOP

ページ先頭へ 前へ 次へ ページ末尾へ