787型機のトラブルに関する見解と航空労働者からの問題提起


787型機のトラブルに関する見解と航空労働者からの問題提起

2013年2月21日

航空労組連絡会

徹底した原因究明を行い有効な再発防止策を講じるよう求める


1月7日、ボストン空港で駐機中の日航機のAPUバッテリーからの発火事故に続き、1月16日には、山口宇部発羽田行き全日空692便が、メインバッテリーが過熱・発煙し、高松空港に緊急着陸、乗客129名が非常用脱出シューターを使用して緊急脱出するという重大インシデントが発生した。

 幸い、緊急着陸した全日空便においては、当該機乗務員の適切な対応により、数名のお客様が軽傷を負っただけで事なきを得たものの、状況によっては大惨事になりかねない重大インシデントであった。

この間、連続しているボーイング787型機(以下航空機の型式についてはボーイングを単にBと表記)の異常運航、その中でもとりわけバッテリーからの発火・発煙のトラブルについては、安全運航に直接携わる航空労働者として、お客様の命にもかかわる重大事態と受け止めている。一連の異常運航やトラブルの原因の徹底究明とともに、再発防止を含めた抜本的対策が講じられなければならないことは言うまでもない。加えて、原因究明と再発防止が取られるまでの間は、安全運航を最優先する立場から、運航停止措置を継続すべきであり、経済性を優先した安易な運航再開はあってはならないと考えるものである。


より安全な旅客輸送サービスの実現をめざし必要な検討・検証、見直しを

B787型機は、従来の航空機に比べ設計・製造上で新たな考え方や新技術が取り入れられて開発された航空機である。新技術等の導入で安全性が向上することは歓迎されることではあるが、その一方で、採用した新しい技術に関連して、運航開始後、予測されなかった不具合が発生し、それに対する対応手順、修復の方法などについて未確立と思われる現象も起きている。また、不具合の予測や修復の方法などにつても、経験やノウハウの蓄積が十分でないという課題を抱えている。こうした現状認識から私たちは、バッテリー系統の不具合等についての原因が特定できていない段階ではあるが、現時点で知りえた情報をもとに、より安全で、より信頼できる運航の実現に向けて、以下のような事項について検討すべきではないかと考える。また、提起している12項目の中には、B787型機の導入等を契機とした、2008年の安全基準の緩和に関わる項目が多くあることから、安全基準の緩和が適切であったかも再考すべきであろう。

 原因特定がされていない段階であることや詳細な情報が不足している中での問題提起であることから、不十分な面については必要により見直しや補強をしなければならない状況ではあるが、より安全運航を実現するために現場から出された声として問題提起を受け止め、安全対策を立てる際に、活用・反映されることを切に望むものである。


1.リチウムイオン電池を使うことの是非の再検討、

引き続きリチウムイオン電池を採用する場合には、新たな安全対策の検討を

@リチウムイオン電池を使うことの是非の再検討

リチウムイオン電池については、航空貨物として搭載することの是非が問われた経緯がある。また、B787型機に採用することについては、米国の定期航空操縦士協会より問題提起がされ、その是非とともに消火方法の確立等をめぐって論議もされた。ビジネス機の事例ではあるが、一旦はリチウムイオン電池を採用したものの、その後従来のバッテリーに仕様を変更した例もある。

当然ではあるが、同電池を使用する場合は、十分な検証に基づき安全性が担保されなければならない。今回の発火・発煙という状況を踏まえ、改めてリチウムイオン電池を使うことの是非を含めて、その安全性を再検証すべきである。


A熱暴走の防止対策、不慮の事態による熱暴走や発火・発煙の際の被害の隔離策及び消火方法の検討

  リチウムイオン電池は、可燃性の高い電解液を使用していることや高温に達すると酸素を発生することなどから、消火が困難と言う特性があるが、B787型機については想定外のこととしてコックピットからの消火手順がない。熱暴走防止対策が講じられた後でも不慮の事態による熱暴走や発火等を想定し、被害の隔離策・消火方法等を設定すべきと考える。


Bバッテリー モニター ユニット(BMU)取り付け位置等の検討

B787型機に搭載されているBMUは、バッテリーセルを入れた筐体内(バッテリー本体内)にあり、今回のケースでは、BMU自体も焼損する事態となった。少なくとも発火源となるバッテリーセルとは隔離された状態となるよう設置場所やその方法を検討すべきと考える。

Cバッテリー本体の取り付け位置の検証・検討

メインバッテリーは航法や操縦に欠かせない電子機器類が集約されている電気室に搭載されている。また、日航機の火災においては、航空機の構造部材にもダメージが生じた。被害の拡大を防止し、安全に深刻な影響を及ぼさない隔離措置の一環として、取り付け位置が今のままでよいのか、その検証をすべきある。

 

Dリチウムイオン電池を照明用バッテリーパックに使用することについての検証

   A380型機などでは、非常灯などに使用するバッテリーパックにリチウムイオン電池が使用され、客室内に装備されている。バッテリーそのものは小型ではあるが、客室内に設置されていることも考え、使用の是非や被害の隔離方法等が十分できているか否かを再検証すべきと考える。


2.電源系統の主要個所である配電盤の焼損等への対応策

B787型機においては、配電盤焼損の事例が報告されており、全日空おいても数件の事例が報告されている。一部の部品の焼損にとどまらず電源系統の中枢部ともいえる配電盤内の他の部署に被害が拡散するような事態はあってはならない。こうした弱点を克服し、より信頼性を高めるために一連の不具合に対する原因究明を行い、徹底した再発防止対策が取られているか再検証することが求められる。


3.コンポジット材、カーボン素材の特性に対応した点検方法等

当該個所にダメージを与えた際、凹み等のダメージが素材の復元力により元に戻る場合もあることから、整備士が発見しにくいとのとの指摘があがっている。また、修復方法については、アルミ合金と違いボンド等で修復する場合もあるが、その場合硬化時間が長いことから、完了するまでに長時間を費やしている。

こうした素材を採用するに当たっては、ダメージを受けた場合はその痕跡をとどめ、構造部材の健全性が正確に確認できるようにする対策を立てることが求められる。また、迅速な修理を可能にするための方策等も研究すべき事項と言えよう。


4.多岐にわたる部品メーカーに分散し、ボーイング社で組み立てる製造方法と品質管理の状況の検証

製造責任は最終的に機体を組立てるボーイング社が全責任を負うのは当然である。部品メーカーが多岐にわたるB787型機については、部品も含めて製造過程から完成までの品質管理は極めて重要であることは言うまでもない。こうした品質管理が部品メーカーも含めて徹底されているか否かを、管理体制も含めて検証することも必要である。

なお最近の事例では日本航空所有のB787型機の燃料タンクから、ウエス、リベットなどが発見された事例が報告されている。これらが原因となり、燃料ポンプを詰まらせる可能性もあることから、重大な事態になりかねない事例でもあった。

また、パソコン等で発生したリチュウムイオン電池からの発火は、製造過程における不純物の混入が原因とされている。

こうした事態が生じないよう、部品メーカーも含め、製造過程全体を通じて品質管理が適切に行われているか検証することが求められる。


5.飛行記録方式の再検討

再発防止のために飛行記録装置(ボイスレコーダーやフライトデータレコーダーなど)が搭載され、 近年では不具合に対する整備処置を容易にするための記録コンピューターシステムも備えている。しかし、DFDR(フライトレコーダー)の最近の傾向は、フライトフェーズでデータの採り方が変化するなど、絶え間なくデータを記録しているとは限りらない。電源系統などの不具合は、一瞬の電気的ショックなどが不慮の事態を引き起こす可能性を否定できない。したがってこうした現状の記録方式のままでよいか否か、今回の事例も参考にし、再検証が必要と考える。


6.開発段階での実機による試験と検証の在り方(重要な事項のコンピューターによるシミュレーションの是非)

近年の新機種開発においては、コンピューター設計等により、開発段階での試験が省略される傾向がある(ランディング回数を重ねるなど、経年劣化の試験、非常脱出の検証など)。

また、製造時の不良として、電気ケーブルの長さが短く、無理なルーティングで配線され、ケーブルに擦り切れた個所があった事例等も発見されている。コンピューター設計、管理では予測がつかない“現場合わせ”の作業も現に存在する。

こうした事例等に鑑み、開発段階での試験、製造過程での不具合の検証方法等の改善が必要であり、とりわけ安全に重大な影響を及ぶす事項については、実機検証もおこなうなど、より安全性を高めるための対策が必要と考える。


7.新技術の弱点も明確にした、航空従事者などへの教育

とかく新機種の導入時には、整備、運航などの教育・訓練において、その機種の利点とその特徴などが強調されがちである。安全面から新技術の特性や弱点、従来の技術との差異などを明確にした教育が必要であると考える。

また、そうした教育とともに、実際に整備や運航の現場で生じる不具合や問題点等々をフィードバックして改善を図る対応については、今まで以上に重視することが必要である。


8.エンジンを基本としたETOPSによる運航基準設定の再検討

今回の全日空のメインバッテリーからの発煙事故は緊急着陸を要する事例であった。国内線での発生ということもあり、直ちに代替空港への緊急着陸が可能であったが、これが代替飛行場までに時間がかかる洋上やシベリア上空などで発生した場合は、まさに非常事態である。こうした事態を想定した場合、現行のETOPSによる運航基準(長距離飛行−特に太平洋・大西洋横断等の飛行する際に課せられる制限=基準)で十分か否かを検証するとともに、新たな基準等を加えることについても検討すべきではないかと考える。

9.整備による飛行間点検の必要性

近年の航空機は、飛行間の整備点検が不要、重整備も長期間不要という傾向になっている。しかし、B737NG(−800など)型機や、B787型機では運航間での不具合も多く、日航や全日空では形式的には「有資格整備士による法的確認」はしないものの、実質的に整備士を配置し点検が行われている。私たちは、製造国・メーカーが点検不要としたから、日本でも不要とする対応を改め、飛行間点検の重要性をきちんと位置付けた体制にすべきであると考えている。また、整備士の技術の伝承・養成の点からも複数の整備士による飛行間点検の実施を検討すべきである。


10.非常ドアと客室乗務員の配置の問題

高松空港に緊急着陸した全日空機については、当該機乗務員の適切な対応によって、幸いにも、数名の乗客が軽傷を負っただけで事なきを得た。当該機からの緊急脱出については、乗務員の機敏な対応で規程通りの対処はできていたが、後ろのドアの1つのスライドが展開していないのも事実である。

私たち航空連は従前より、航空機のドア数に満たない客室乗務員の編成数について、安全上問題であると指摘をしてきた。これは、緊急脱出時に客室乗務員がドアに配置されないことで、緊急脱出が遅れたり、あるいは、別の事故を誘発する等、旅客の安全を阻害することになりかねないからである。

 1つのスライドが展開していないことについては、当該便の客室の状況や乗務員の判断の確認はできていないが、規定通りできたから問題なしとせず、より安全を向上させる視点に立ち、シビアな状況(満席の場合や実際に火災が発生した場合等々)も想定して検証を行い、非常ドア数と客室乗務員の編成数との関係を改めて検討すべきである。


11.型式証明・耐空証明の国による検証・検査の在り方

熱暴走を起こす危険性のあるリチウムイオン電池を採用するにあたり、FAAはボーイング社のデータを鵜呑みにして承認した(ウォールストリートジャーナル誌)などの報道もされている。

日本においては、ハーモナイゼーションとの名目で、互いの国の承認・証明を持って自国の審査を省略できる制度が採用されている。そして、航空機の型式証明・耐空証明など、米国で証明されれば実質的な審査が行われないと言うのが今日の日本の実態といえる。

今回の事態に鑑み、新型航空機の設計・製造にあたって、急激な技術革新の経過の中で、安全を確保(耐空性を保証)するための米国および日本の審査が適切であったのか再検証をし、検証・検査の充実など、改善につなげていくことが求められる。


12.B787型機の運航停止に伴う代替運航と乗員の資格維持等

代替機による運航が実施されていることから、B777型機やB767型機の乗員繰りが厳しくなっている実態がある。公共性を維持する観点から欠航便を少なくする努力は当然払う必要があるが、それがために過酷な勤務で安全に影響をきたすような事態は避けなければならない。

B787型機導入に際しては、B777型機との高い共通性を理由に機種移行訓練の大幅短縮等がされ、また2機種混合乗務を期待する動きも見受けられた。乗員の確保の必要性などから、今回の事態をとらえて、安易な規制緩和を進めることがあってはならないと考える。

B787型機の運航停止の長期化が考えられる状況が生じているが、こうした事態に対応しかつ運航再開に対して即応できる体制を作るためにも、当該機運航乗員が資格維持できるよう、最大限の対応を取ることが求められる。


以上

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